こんにちは。ログラスでエンジニアリングマネージャーをしている塩谷 @shioyang です。
ログラスのプロダクト開発組織では 2024 年の夏から新しい開発手法に挑戦しています。この挑戦の経緯については伊藤の発表資料をご覧ください。
この記事では、ログラスのプロダクト開発組織で試しているアジャイルフレームワーク FAST を紹介します。
前半では FAST を理解するために重要な要素である動的なチーミングについて、後半では動的なチーミングを支え、メンバー間の流動性を生み出している自律性について説明します。
FAST のスケーリング手法
FAST は Fluid Adaptive Scaling Technology の略で、活動アイテムを中心に自己組織化する手法です。
Fluid Adaptive Scaling Technology (FAST) is a way for people to self-organise around work - that scales.
変化に対応するために、チームを固定せず活動アイテムに対して最適な体制を取ることで目的の達成を目指します。
活動アイテム中心
チームを固定する手法の例として LeSS があります。LeSS は固定した複数のチームが継続して働くことを前提とする手法です。各チームはスプリントごとにアイテムをプランニングして、固定されたタイムボックス内で開発を進めます。各チームでメンバー間の連携や熟練度を高めて、生産性の向上を図ることを目的としています。
対照的に、FAST では必要に応じてメンバーが自由に集まり動的にチームを編成します。コレクティブと呼ばれる活動に必要な人全員を集めた集団の中で、メンバーは活動アイテムに対して自律的に最適な体制を組み、課題解決や価値提供を行います。スプリントのような固定されたタイムボックスの設定はしないですが、リズムをつけるために FAST ミーティングと呼ばれるミーティングを短い周期で開催してチーム間の協力やアイデアの交換を行います。常に学びと変化に対してチーム編成から対応できる仕組みです。
このように、固定チームによる安定した成果を追求する LeSS とは対照的に、FAST はより流動的で変化に迅速に対応できる体制を目指したフレームワークです。
OST に基づく流動性
FAST では、活動アイテムの選択や動的なチーミング、そしてチーム間での行動は、OST: Open Space Technology の考え方を基盤としています。
FAST ミーティングの後半で、バリューサイクルで取り組む活動アイテムを決定します。バリューサイクルとは、1 回の FAST ミーティングから次の FAST ミーティングまでの期間を指します。この際、メンバーが自発的に立候補し、活動アイテムを提案します。立候補したメンバーはチームスチュワードと呼ばれます。このプロセスは OST におけるテーマ出しに似ています。
その後、提案された活動アイテムに対して、各メンバーがもっとも貢献できる活動アイテムを自ら選び、チームが形成されます。
チームに分かれた後も OST の原則が適用されます。各メンバーはハチやチョウのように動くことも可能です。自分が必要だと感じたタイミングで、活動アイテム間、つまりチーム間を移動できます。
この流動性により、各メンバーは最適な貢献をしつつ、柔軟に役割を果たすことができます。
流動性を支える自律 MAX
このように、FAST は OST の考え方に基づきメンバーの流動性を生み出しています。この流動性を最大限に活かすために、メンバーには高度な自律性が求められます。
自律性が求められる場面
例えば、メンバーが最も貢献できる活動アイテムを選ぶ際には、活動アイテムの内容や進捗状況、自分の知識やスキル、チームの人数と構成などを総合的に考慮して判断します。また、場合によっては、自分がまだあまり関わったことのない活動アイテムを選び、コレクティブ内で新しい知識やスキルを学び広げることが、コレクティブ全体にとって最も大きな貢献になると判断することもあるでしょう。
変化に適応しながら最適な活動アイテムとチーム編成を維持するためには、個々の高い自律性が不可欠です。
社内では「自律 MAX」という言葉が生まれ、より高度な自律の意識を浸透させるために使われています!
自律性を活かす超軽量フレームワーク
自律性が求められるのは活動の中だけではありません。FAST は自律性を最大限に活かすために設計された超軽量なフレームワークです。具体的なプロセスや手順が厳密に定められておらず、メンバーの自律性に委ねられています。各メンバーはさまざまな場面で自律性を発揮し、チーム全体で仕組みを作り上げ、改善していく余地が豊富にあります。
まとめ
FAST は自律性を最大限に活用しメンバーの流動性を高める超軽量フレームワークであり、ログラスのプロダクト開発組織ではその可能性を試しています。固定されたチーム編成ではなく活動アイテムごとに最適なチームを動的に形成することで、変化に迅速に対応できる体制を整えようとしています。
FAST では各メンバーが自発的に活動アイテムを選択し最適なチームを作り上げていくため、メンバーひとりひとりに高い自律性が求められます。OST の原則に基づき、メンバーは必要な時にチーム間を移動しながら、プロダクト全体の成功に貢献することができます。
「自律 MAX」という言葉が象徴するように、ログラスではこの高度な自律性を意識し、さらなる成長と変革を目指しています。FAST によって、個々のメンバーが最大限の自由と責任を持ちながら、プロダクト全体の成功に貢献できる環境を作ろうとしています。これからの挑戦を通じて、より柔軟で適応力のある開発組織を実現していきます。