この記事では10月9日開催「Loglass TECH TALK vol.4〜ログラスが挑むFASTでのスケーリング戦略〜」で登壇したEM塩谷の発表内容の書き起こしをご紹介します。
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EM 塩谷登壇「今こそ変化対応力を向上させるとき 〜ログラスが FAST に挑戦する理由〜」
FASTとは何か、なぜログラスがFASTに挑戦しているのか
塩谷:私自身は今年春ごろに行ったスケーリングの勉強会でFASTを知り、その後FAST推進チームに参加して今はFAST MTGのファシリテーションを担当しています。
今日はなぜログラスで変化対応力の高いプロダクト組織が求められているのか、FASTとは何か、そして実際に導入してどんなことが起こったのかをお話ししたいと思っています。
最初に簡単に会社について説明すると、ログラスは「良い景気を作ろう。」というミッションを掲げているスタートアップです。
現在は企業価値を高めるクラウド経営管理システム「Loglass 経営管理」をメインに複数プロダクトを提供しています。
従来の開発体制と課題
これまでの開発体制は、3つのスクラムチームが機能領域ごとに分かれて開発を進めていました。
この体制は、複雑なドメインに対して認知負荷を下げ、領域ごとの生産性を最適化することができていました。
ただ、プロダクトと組織が大きくなるにつれて、以下のような課題が浮き彫りになってきました。
・ディスカバリー段階で、複数の領域を扱う課題の理解が難しい。
・チーム間の機能またがりの連携コストが高く、開発速度が出にくい。
・プロダクト全体を俯瞰して体験を設計・実装できる人材が少なくなっている。
・組織の拡大に伴い、個々の自律性が保てなくなる懸念がある。
このような課題を解決するアプローチとして、FASTの導入を検討することになりました。
FASTの特徴
FASTの特徴は、動的にチームが作られることです。
これまでログラスで行ってきたスクラムでは固定化されたチームがありましたが、FASTでは「コレクティブ」と呼ばれる、同じ目的を持ったメンバーの集合があります。
コレクティブの中には、エンジニアの他にPdMやデザイナーもおり、個々のメンバーが優先度の高い活動アイテムを提案し、それに対して人が集まってチームが形成されます。
これを短い期間の「バリューサイクル」というサイクルごとに行うことで、より最適なチームを作りながら、流動性高く活動を行っています。
FASTの導入プロセスと初期の結果
FASTへの移行の流れとして、まず3つのスクラムチームを1つのコレクティブに統合しました。最初にそれぞれのスクラムチームの中でFASTを試した後、1つに統合するという流れで進めました。
現在は導入から7週間経過し、14回のバリューサイクルを回しています。その中で、実際にどのようなチーミングが起こったのかを紹介します。
上の図が実際の4バリューサイクルでの個々の動きです。サイクルごとに移動が毎回起こっており、これはメンバーが自律的に最適な貢献先を選んでいる結果だと思っています。
また、ディスカバリーのアイテムに対しても毎回のバリューサイクルで移動があり、必要なタイミングで適切な知識や経験を持つメンバーが参加できていると感じています。
FASTによる変化と成果
FASTの導入によって、機能領域をまたがったメンバーでのチーム形成が促進されました。
以前の体制である3つのスクラムチームのメンバーが混ざったチームの割合は、30〜60%でした。これはPdMやファシリテーターが意図的に混ぜるように指示したわけではなく、メンバーが自律的に最も貢献できる場所を選んだ結果として起きています。
ファシリテーションの観点からは、メンバーが自律的に判断するための情報を引き出す動きが重要だと考えています。
例えば、活動アイテムのゴールを明確にしたり、全体で質問を共有したりすることで、個々のメンバーが適切な判断ができるようなサポートを意識しています。
FASTをやっていくなかでどこまで自律性に任せるべきか、介入した方がいいのか迷う時も正直ありますが、やはり自律性を信じて任せてやっていくことがとても大事だと思っています。