スクラムフェス金沢2025参加レポート

こんにちは、ログラス エンジニアの櫻井です。

 

6/13, 6/14 に開催されたスクラムフェス金沢に参加してきましたので、初スクラムフェス現地参加の雰囲気をお伝えします。

 

www.scrumfestkanazawa.org

 

会場は金沢駅から徒歩15分のITビジネスプラザ武蔵という施設でした。

 

www.hot-ishikawa.jp

金沢駅の巨大な門。鼓門と言って、金沢の伝統芸能である能楽で使う鼓がモチーフだそうです。会場までの金沢の街は素敵な街並みでした。新幹線の時間がギリギリであまり観光できなくて無念でした。遠征でスクフェスに参加する方は余裕のあるスケジュールで現地を楽しみつくすのがオススメです。

 

ここからは、参加して印象に残ったセッションについて紹介していきます。

Keynote:国土強靭化とは何か? ~能登半島地震・豪雨に学ぶ~ 雄谷 良成 氏

  • 社会福祉法人佛子園の理事長 雄谷 良成さんによる素晴らしい基調講演でした。
  • 高齢者も、若者も、子どもも、障害のある方もない方も、ごちゃ混ぜで過ごせる場をコンセプトにした福祉施設のお話を中心に様々な活動を紹介いただきました。
  • 人が困難を受け入れて良い変化をしていくプロセス(否認→受容→感謝)や人々が活き活きとすごせる場づくりのパタン・ランゲージの考えかたを実例を交えて提示いただきすごく説得力
  • 余命宣告された入居者のお話、何度もトラブルを起こしてしまう方のお話など、向き合いにくい問題にしっかりと向き合い受け入れているお話は圧巻でした。
  • また、とてもお話がうまく、すっかり聞き入ってしまいました。壮絶なエピソードを終始にこやかに話されていたのが印象的でした。

スクラムチームの未来を照らすラフでライトでシンプルな見通しの立て方 asato

confengine.com

www.docswell.com

  • スクラムチームにおける見通しを立て続けることの大切さを説明いただきました。
  • 非常に丁寧かつ順序立てされた説明でとてもわかりやすかったです。最後の質疑応答で、今日の発表内容を書籍化しないんですか? と質問が挙がっていましたが、本当に教科書のような分かりやすさでした。
  • 特に見通しと計画の違いについての言語化が上手いなぁと感じました。開発者なら、見積もりをたてたら、計画(≒コミットメント)として扱われて困ったことが一度はあると思いますが、見通しはそういった計画とは違うということがわかりやすく説明されていました。

  • また、見通しの有用性を示しつつも、見通し自体はユーザーに価値を提供しない。だから「ラフに、ライトに、シンプルに」運用することが大事。と続き、実践的な内容だと感じました。

 

FASTと向き合うことで見えた、大規模アジャイルの難しさと楽しさ  @wooootack 

confengine.com

speakerdeck.com

 

  • 弊社ログラスから @wooootack による FAST の発表です。
  • 日本ではほとんど前例のない FAST という手法で、現場で発生した様々な課題や混乱に向き合ったお話でした。
  • 普段から社内で誰よりも大規模アジャイルと向き合っている @wooootack だけあり、課題の一つ一つがリアルで生々しい内容で、すごく熱量が伝わってくる発表でした。
  • 特に、複雑な課題を安易に分割せずに向き合うという部分がすごく良かったです。まだまだ試行錯誤しながら進めているFASTですが、この部分の価値は見失わないようにしたいなと改めて感じました。
  • あと純粋に発表がメチャクチャ上手く、さすがだなと思いました。FASTの説明から、現場の課題、得られた学びが綺麗にまとまっていて最高の発表でした。

 

チームのギクシャク、システムコーチングで体験してみよう!

2日目の最後に参加したワークショップです。

せっかくの現地参加だったので、是非ともワークショップに参加したいと思い参加しましたが大変満足度の高いワークショップでした。

コーチ役の二人はもちろんですが、他の参加者の方もファシリテーションや場作りが非常に上手な人が多く、終始楽しく参加することができました。

 

システムコーチングとは、

従来の対個人のコーチングではなく、チームや人間関係(≒システム)を対象としたコーチングを指すそうです。

 

crrglobaljapan.com

 

参加しての感想ですが、すごく面白い手法だなと感じました。

チーム間の問題は、一人一人の意識を変えても簡単に解決しないことが多いですが、それならチームごとコーチングしてしまえば良いという発想は目から鱗でした。

コーチングのパターンは色々存在するようなので、詳しく調べてみようと思います。

 

最後に

以上、スクラムフェス金沢の参加レポートでした。

参加後に風邪でダウンしたりと色々あり、参加からだいぶ期間の空いた参加レポートになってしまいました。

参加時のメモに加筆しながら記事を書いていますが、今思い出しても、とても素敵なイベントでした。

スクラムフェス金沢運営、登壇者の皆様に大感謝です。 

ログラス初の社内AIハッカソンを開催しました

こんにちは、ログラスでProductHRをしている永井です。

先日7月22日に、社内で初となるプロダクト開発組織全体での社内AIハッカソンを開催しました。
この記事では開催の背景から準備・当日の様子をお届けします。

初開催の社内AIハッカソンの開催背景

現在はAIの普及により職種間の境界が曖昧になり、新しいワークフローが次々と生まれています。
一方でログラスでのAI活用は個人の業務効率化レベルに留まっている側面もあり、組織としてのポテンシャルを活かしきれていないのでは?という課題感もありました。

その課題を強く感じていたデザインMgrのうえだがAIハッカソンを企画し、そこに賛同した運営メンバー4名と共に準備を進めてきました。

うえだの発信から始まった企画

当日に向けては、デザイナーがAIと共同制作したポスターを社内に貼り出したり、事前にチーム分けを発表するなどして組織全体を盛り上げていきました。

今回のAIハッカソンの内容

今回のAIハッカソンでは、

1. AIによる新しい働き方の実践
2. 職種横断的なAI活用アイデアの創出 
3. 全社的なAI活用ナレッジの共有促進

の3つをゴールとしました。

そのうえでテーマは『AI秘書育成ハッカソン』〜日々の業務からの解放〜とし、各自が抱える「時間がかかる」「面倒だが重要」な業務をAIに任せるアイデア・ソリューションを開発することで、より創造的な業務に集中できる環境づくりを目指しました。

エンジニア・デザイナー・PdM・ProductHRなどプロダクト開発組織のメンバーを職種横断で約5名ずつのチームに分け、実用性・技術革新性・デザイン性などの複数の審査軸で優勝を決める形式としました。

当日の様子

当日は最初に全員で集まった後はチームに分かれ、6時間ほどのハッカソンタイムを経て、チームごとの成果発表と審査結果発表という流れとしました。

ハッカソンタイムでは、各チームがユーザーとなる社内メンバーにヒアリングをしたり、業務フロー図やアーキテクチャ図を書いたり、各種AIツールでモクモク実装したりと、どのチームも賑やかに取り組んでいました。

成果発表&グランプリ発表

各チームの成果としては
- 経営企画業務を体験し、ユーザー理解を深めるためのシュミレーションゲーム
- 社員の自己紹介DBをもとに、話が弾みそうなメンバー同士を提案するツール
- カスタマーサクセスが担うアダプションをサポートするSlack bot
- 顧客要望を分析するダッシュボード

など多様なアイディアが生まれ、ハッカソンの時間内でモック作成だけでなく、実装まで完了したチームもありました。

特に印象的だったのは、どのチームも単なる技術的な実装に留まらず、実際のユーザー体験や業務フローまで考慮していたり、ユーザーとなるメンバーにアウトプットの使用感をヒアリングしていたことです。
ユーザー起点で、ユーザーにとって本当に価値のあるものをつくるという観点は普段の開発と全く同じだと感じました。

成果発表の様子

そして栄えある第一回AIハッカソンのグランプリは・・・

マーケティングチームが行なっている展示会のシフト作成の自動化ツール」

となりました👏

ログラスでは年間で多くの展示会に出展していますが、200名近い参加メンバーのシフトをマーケメンバーが手作業で組んでいるという課題を捉え、その作業を効率化するツールを実装しました。

これまで3時間かかっていた展示会シフトの初稿作成が、1クリック・3分で完了するという99%工数削減のツールに、デモを見てもらったマーケメンバーからの「いいですね!これで運用を回してみたいです」というコメントも発表されていました。
このチームには普段展示会のデザインに関わっているBXデザイナーがいたので発見できた課題でもあり、まさに職種横断ならではの力を発揮していた点も印象的でした。

優勝チームの皆さん、おめでとうございます!

参加したメンバーからは
「複数職種がいるチーム構成であり、いろいろな視点からコメントしながらものづくりができてよかった」
「審査基準に実用性があったおかげで理想と現実の中で現実的なソリューションを探索する方向に知恵を絞れた。その結果、プロダクト開発の楽しさと難しさを味わえた気がしてよかった」
「Claude Codeなどを使えば、こんなに短期に開発サイクルを回せるのだと身をもって実感できた)」
などポジティブな感想を多く聞くことができました。

また、
「ビジネスサイドを巻き込んで全社ハッカソンするとより良い課題が見つかりそうだなと思った」
「Sales側にも数名参加してもらえると、より幅広く実務で利活用できるソリューションが生まれる可能性が高いと感じた」
といったコメントもあったので、全社を巻き込んだAI活用による課題解決も引き続き取り組んでいければと思っています。

オフライン参加メンバーでの集合写真

おわりに

今回初めて社内AIハッカソンを開催しましたが、1日という短時間でも職種横断的なチームワークとAIツールの活用で、実用性の高いソリューションが生まれることを実感できました。
一方で最後の総括でCTO伊藤からは「1日でものすごく良いアウトプット・アウトカムが出たと思いつつも、あえて厳しいことも言いたい。今日のアウトプットの中にはAIの力を全然引き出せておらず、これまでのプロダクト開発の延長線上でしかないものもあった。AI駆動でこれからのプロダクト開発を本気で変えていかないといけないので、今日の内容で満足してはいけない。本来であれば、どのチームももっとAIの可能性をしっかり引き出して、AIで本当に変えていくという気概で今日中に動くものを作り切ってほしかった。」という激励もありました。
今回のAIハッカソンが今後のAI駆動開発を加速させていくきっかけと捉え、今後もプロダクト開発組織全体でより本気でAIと向き合っていきたいと思います。

CTO伊藤からの激励メッセージ

We are hiring!

ログラスでは全社的なAI活用推進をリードするポジションを積極募集中です!
少しでも興味がある方は、ぜひお気軽にご連絡ください!

運営メンバー(AIと共作のデザインを入れたお揃いのTシャツも制作)

SRE NEXT 2025 に協賛およびEM勝丸が登壇します

ログラスは7月11日〜12日に開催される「SRE NEXT 2025」に協賛しています。
信頼性に関するプラクティスが集まる本イベントを共に盛り上げていきたいという思いで、今回LOGOスポンサーをさせていただいております。

セッション紹介

ログラスからはクラウド基盤チームEMの勝丸が「SRE不在の開発チームが障害対応と向き合った100日間」というテーマで登壇します。

ぜひご視聴ください。(視聴申し込みはこちら

時間

7/11(金) 11:30〜12:00

タイトル

「SRE不在の開発チームが障害対応と向き合った100日間」

詳細

創業以来、障害対応はエンジニアの持ち回りで行ってきた私たちのチーム。大きな混乱もなく、うまくやれているつもりでした。

しかしある日、カスタマーサクセスチームから「最近の障害対応はうまくいっていない」というフィードバックを受けました。最初は「そんなはずはない」と思っていましたが、会話を重ねるうちに、対応品質のばらつきや伝達の不統一など、顧客視点でのズレが少しずつ明らかになっていきました。
マニュアルはあったものの、読み合わされることもなく、ドキュメントの存在すら知らないメンバーもいた。「誰に何をどこまで伝えるか」は人によってまちまちで、知らないうちにチームが期待を毀損していたのです。

このセッションでは、そこから障害対応の品質改善プロジェクトを発足し、約3ヶ月かけて取り組んだ改善活動を紹介します。
インシデントコマンダーの専任化から始まり、障害対応フローの整備、Slack運用の見直し、外部ツールの導入、ステークホルダーとの対話を通じた文化づくりなど、仕組みと会話の両輪で信頼性を回復させていった試行錯誤の記録です。

SREやEMのような肩書きがなくても、信頼性には向き合えます。
信頼を取り戻し、チーム全体で障害対応に向き合える土壌をつくっていく。そのプロセスと得られた気づきを共有します。

参考情報

ログラスにおけるSREの現状と未来や面白さについては、こちらの記事もぜひご覧ください。

採用情報

ログラスではクラウド基盤チームからSRE組織に進化する途中であり、共にSRE組織を立ち上げる方を募集中です!
ご興味がある方はお気軽にご連絡ください。

【協賛レポート】開発生産性Conference2025にスポンサーとして参加しました!

こんにちは。ログラスProductHRの永井です。

この記事は2025年7月3〜4日に開催された『 開発生産性Conference2025』の協賛レポートです。

カンファレンスの概要や協賛の背景については、以下の記事をご参照ください。

ログラスは開発生産性Conferenceの初回から協賛しており、今年で3年目となります。
今回はカンファレンス3ヶ月前にキックオフを実施し、エンジニア・デザイナー・ProductHRの協業で準備を進めてきました。

プロダクト開発のスケーリング課題に関するアンケートを実施

ブース企画として『プロダクト開発のスケーリングにおける課題はなんですか?』というお題で参加者の皆さんにアンケートを実施しました。

150名以上の方に付箋を貼っていただき、ブースに来られた方もつい見入ってしまうような濃い内容のボードとなりました。
アンケートに回答してくださった皆さん、ありがとうございました!

ログラスのスケーリングアプローチについての紹介

さらにブースでは、ログラスがスケーリングアプローチとして取り組んでいるFASTについて、FAST挑戦の背景にあった課題やカルチャー、そして導入から1年間の変化をボードで紹介しました。
とても興味深そうに聞いてくださる方も多く、ログラスの試行錯誤の取り組みが少しでも伝わっていたら嬉しく思います。

大好評のノベルティ

今回ノベルティとして、技術同人誌とアクリルキーホルダー、クリーナーの3つを新たにご用意しました。
「Loglass Scaling Book2025」は今回のカンファレンスに向けて執筆した記事を含むFAST関連のログラスメンバーの発信記事をまとめた一冊で、参加者の皆さんに特に好評でした。

当日Getできなかった方はこれまでのFASTに関する発信のまとめ記事をぜひご覧ください。

VPoE飯田のセッション「自律的なスケーリング手法FASTにおけるVPoEとしてのアカウンタビリティ

1日目にはVPoEの飯田(@ysk_118)のセッションがありました。
スケーリングアプローチとしてFASTを導入した1年での学びや、開発生産性との向き合い方、VPoEとしてのアカウンタビリティやスタンスについてお話させていただきました。



資料も公開しておりますので、ぜひご覧ください。

SNS上でもセッションを聞いていただいた方から多くのリアクションがありました。

セッションの感想記事を書いてくださった方もありがとうございます!
開発生産性カンファレンス 2025 1日目 に参加しました - 幡ヶ谷亭直吉ブログ

【セッションレポ】自律的なスケーリング手法FASTにおけるVPoEとしてのアカウンタビリティ|モブエンジニア

まとめ

今年はKent BeckさんやGene Kimさんなど海外の第一人者の来日や、生成AI時代の過渡期における開発生産性を模索する多くのセッションもあり、とても熱量の高い2日間だったと感じます。

ログラスのセッションも多くの方に聞いていただいたり、ブースにもたくさんの方にお越しいただき、アンケート企画やノベルティを楽しんでいただけた様子で、準備をしてきた運営メンバーとしてうれしく思います。

ログラスでも引き続き開発生産性に関する取り組みを継続し、学びの発信を通してコミュニティへの還元をしていきたいと思います。

関連イベントのご案内

開発生産性Conferenceの熱も冷めやらない中で、今後ログラスでは複数の関連イベントを開催します!
オフライン参加では懇親会もご用意しています。当日ログラスメンバーと話しきれなかった方や、ログラスのスケーリングや開発生産性の取り組みについてより深掘って知りたい方など、ぜひ気軽にお越しください。
ご参加をお待ちしています🐳

(1)7月17日(木)19:00- 「アジャイル×AIの今と未来を語る」日本にアジャイルを広めた先駆者・平鍋氏とログラスCTOが「アジャイル × AI」をテーマに対談します。
ログラスが取り組むFASTについてもテーマに取り上げ、両者の視点から語ります。

(2)7月24日(木)19:00-「Loglass Tech Talk vol.6 FAST実践のリアル〜壁にぶつかり、悩み、試し続けた1年間〜」スケーリングアプローチとしてFASTを実践した1年間のリアルな苦悩や試行錯誤を、エンジニア、QA、PdM、デザイナーといった各ロールの視点から発信します。

(3)7月30日(水)19:30-「【3社合同】After 開発生産性Conference 2025 改善しNight」
タイミー様、DELTA様と共催で、開発生産性Conferenceの感想戦などをカジュアルにするafterイベントです。
ログラスからはEM鈴木が登壇し、FASTと開発生産性をテーマにお話しする予定です。

開発生産性Conference2025にスポンサーとしてブース出展およびVPoE飯田が登壇します

 

ログラスは7月3日・4日に開催される開発生産性Conference2025にGoldスポンサーとして協賛しています。

開発生産性Conferenceとは

開発生産性Conferenceは、海外・日本の開発生産性に関する最新の知見を集め、
各企業のベストプラクティスや開発生産性向上への取り組みを通して、
新しい時代の開発のヒントを提供します。(公式説明

スポンサー背景

ログラスでは2024年夏より国内の導入事例がほとんどないスケーリングフレームワーク「FAST」を取り入れるなど、開発生産性と向き合い続けてきました。

また、Tech Value「Update Normal」の行動原則の1つに"技術的卓越性の追求と還元"があるように、自社での学びを積極的にコミュニティに還元していきたいと考えており、今年も協賛させていただいています。

業界全体の開発生産性が上がることによって、ログラスのミッションである「良い景気を作ろう。」にも繋がっていくと信じており、これからも継続してコミュニティへの還元をしていきたいと考えています。

登壇内容の紹介

7/3(木)14:00 ~ 14:40 ホールBにてVPoE 飯田(@ysk_118)が登壇します。

タイトル

自律的なスケーリング手法FASTにおけるVPoEとしてのアカウンタビリティ

詳細

ログラスでは2024年8月からFASTというアジャイルフレームワークを用いて開発しています。FASTはカンバンとOSTの考え方を取り入れ、メンバーの自律性を最大限に活かしてスケーリングするフレームワークです。 導入検討まで含めると1年超となる取り組みにおいて、事業成果、品質、開発生産性などの観点に対し、VPoEとしてどのようにアカウンタビリティに向き合っているかをお話しします。

当日はLive配信も予定してますので、ぜひご視聴ください!
お申し込みはこちら

ブースコンテンツのご紹介

ブースでは、ログラスにおけるスケーリングと開発生産性についてまとめたボードを掲示しています。

実際に日々取り組みを試行錯誤しているエンジニアメンバーがブースでお待ちしているので、気になった方はぜひ詳細を聞いてみてください!

あわせてアンケート企画としても実施します。
みなさんが関わるプロダクトをスケールするにあたっての課題感をぜひ聞かせてください。

ノベルティのご紹介

今回のカンファレンスに合わせて限定ノベルティを用意しました!
アンケート企画に参加し、ログラス公式Xアカウントのフォロー&リポストをしていただいた方におひとつプレゼントしています。
いずれも数量限定なので、ぜひ早めにブースに立ち寄ってGetしてください!

1. 技術同人誌

スケーリングアプローチとしてログラスが取り組む「FAST」に関する記事をまとめた技術同人誌『Loglass Scaling BooK 2025』
今回のカンファレンスに合わせて公開した記事も複数掲載しています。

2.アクリルキーホルダー

2つ目はログラスのTech Value「Update Normal」のアクリルキーホルダー。
身の回りのものにつけることで、"見た目をUpdate" にかけて制作しました。
とてもかわいい仕上がりになっています!

3. クリーナー

3つ目はログラスのTech Value「Update Normal」を印字したクリーナー。
こちらもメガネなどを拭いていただくことで、"視界をUpdate"にかけて制作しました。
古いコードやプロセスをキレイにしてUpdateしていこう!という思いも込めています。

当日ログラスブースでお待ちしています🐳
ぜひ気軽にお立ち寄りください!

関連イベントのご案内

本カンファレンス後にアジャイルやFAST実践をテーマにしたイベントや、同じく協賛する会社様と共催でafterイベントを開催します!
どのイベントもオフライン参加では懇親会もご用意しています。ぜひご参加ください🙌

(1)7月17日(木)19:00- 「アジャイル×AIの今と未来を語る」日本にアジャイルを広めた先駆者・平鍋氏とログラスCTOが「アジャイル × AI」をテーマに対談します。
ログラスが取り組むFASTについてもテーマに取り上げ、両者の視点から語ります。

(2)7月24日(木)19:00-「Loglass Tech Talk vol.6 FAST実践のリアル〜壁にぶつかり、悩み、試し続けた1年間〜」スケーリングアプローチとしてFASTを実践した1年間のリアルな苦悩や試行錯誤を、エンジニア、QA、PdM、デザイナーといった各ロールの視点から発信します。

(3)7月30日(水)19:30-「【3社合同】After 開発生産性Conference 2025 改善しNight」タイミー様、DELTA様と共催で、開発生産性Conferenceの感想戦などをカジュアルにするafterイベントです。
ログラスからはEM鈴木が登壇し、FASTと開発生産性をテーマにお話しする予定です。

皆さんと共に、カンファレンスやコミュニティを盛り上げていければと思っています!
ぜひカンファレンスやイベントでお会いしましょう🐳

FASTを導入したログラス開発チームの変遷

はじめに

本記事は、開発生産性カンファレンスに向けて発信する、ログラスで導入したスケーリングフレームワークFASTに関する連載記事「#私から見たFAST」シリーズの4記事目です。

FAST導入の取り組みの変遷をお伝えできればと思います。

内容は、弊社エンジニアの粟田とアジャイルコーチとして参画いただいている今井氏にインタビューを行い、その内容をもとに福土が記事を構成しました。

なお、FASTの詳細な考え方ややり方などについては詳しく触れません。
詳しい情報を知りたい方は、下記をご参照ください。
FAST Guide

FAST導入の背景と理想状態

ログラスでは、従来複数のスクラムチームで開発を行っていましたが、以下のような課題を抱えていました:

  • 機能領域に閉じた開発の課題
  • 組織成長・異動に伴う調整コスト

FAST導入前は各機能担当のチームが固定でした。

チームが固定であることは特定の機能領域に閉じたディスカバリーや機能開発であれば効率的です。

ただプロダクトの規模が大きくなるにつれ、プロダクト戦略の中で1つの機能領域に閉じない提供価値を模索する必要があり、今までにない密な機能横断的な連携が必要な状況でした。

これによってチーム間の連携にかかるコストが徐々に大きくなっていました。

また、新規事業立ち上げによる異動が発生し始め、メンバーの配置変更や新しいチーム編成に伴う調整コストも都度発生していました。

特定のドメイン知識を有する開発者がチームから離れることで、知識が少数のメンバーに属人化し、開発速度の低下やリスクの集中といった課題もありました。

これらの課題は、組織の拡大や既存社員の新規事業への異動によって、今後さらに顕在化してくることが予想される状況という背景でFASTを導入しないかという話が上がっていました。

理想状態

ログラスではFAST導入により、いくつかの理想状態を目指しています。

  • 全体のプロダクト課題を組織全体が認知し、機動的な開発が推進できている
  • 多能工組織への移行

多能工組織について補足すると、こちらは専門性を保ちながらも、1人のメンバーが複数の業務に対応できるような人材を育成し、必要に応じて異なる領域でも貢献できる組織を指しています。

ログラスにおいてもプロダクト戦略上ドメインである経営管理全体のビジネスにフォーカスして課題解決を行う上で開発組織が多能工であることが必要であると考え、こういった理想状態を目指していました。

FASTは、最小限の構造と流動的なチーミングを通じて適応性と創発を実現する超軽量なスケーリングフレームワークであるため上記の理想状態を目指す上で適切と判断し、導入に至っています。

この記事を読む上での前提知識

この記事を理解するために、以下の概念を説明します:

  • コレクティブ:複数の機能開発チームを統合したチーム単位
  • バリューサイクル:FASTにおける開発サイクルの単位。このバリューサイクルごとにチーム編成を見直す
  • マーケットプレイス:メンバーが取り組みたい活動を提案・説明し、他のメンバーがその中から参加したい活動を選択することで、自然にチームが形成される仕組み
  • スウォーミング:複数のメンバーがSwarmして(群がるようにして)1つのタスクに集中して取り組む協働スタイル。開発物のリードタイムを短くし、チームの問題解決能力を向上させ、チーム内のナレッジシェアを促進させる効果がある
  • 枠(スロット):特定のタスクや目的のために編成される作業枠。従来の固定チームとは異なり、必要に応じてメンバーが流動的に参加する。ログラス独自の呼び方
  • 枠数制限:カンバンのWIP制限を流用したもの。枠の最大数を決めておくことで、並列に活動できる最大のチーム数を制限し、スループットの向上やチーム間の協力が促進されるプラクティス。ログラス独自の呼び方

理想状態に向けた3つのフェーズ

以下では、FAST導入から2025年6月現在までの約8ヶ月間の変遷を3つの時期に分けてご紹介します。

「プロダクト提供価値を高める模索」期(2024年8月〜10月)

この期の位置づけ

この期は、「全体のプロダクト課題を組織全体が認知し、機動的な開発が推進できている」に向けた初期の取り組みがあったように感じます。

当時の状況

この時期の大きな背景として、プロダクトの提供価値の優先順位づけが複雑な状況にあったことが挙げられます。

スタートアップ特有のビジネス環境の変化が激しく、お客様との案件が多数並行して進む中、機能単位での意思決定が求められる場面が多くありました。

また、ロードマップは非常にタイトなスケジュールとなっており、現実的にリリースできる機能数とのバランス調整が困難な状況でした。

こうした状況下で、FAST導入初期は、複数の価値提供を可能な限り並行して模索するというマインドセットがメンバー間で強い時期でした。

FAST導入のアプローチと適応度の差

弊社では、まず各スクラムチームが個別にスクラムからFASTへ移行し、その後でチームを統合してコレクティブを形成するという段階的な導入を行いました。

この導入過程で、元々のスクラムチームによってFASTへの適応度に差が生まれています。

適応度に言及する上で重要なポイントは枠数制限です。

FAST提唱者であるQuinton Quartel氏が書いた記事ではカンバンのプラクティスをそのまま利用しているためWIP制限と言及されていますが、WIP制限を行わずにFAST活動が進む中で、それぞれのチームの進捗が遅く追跡も難しい状況となったという言及があります。

したがってログラスでもスクラムチームであった時に各チームにて枠数制限を設けてFASTへの移行を図りました。

一部のスクラムチームでは、スウォーミング文化が根付いており、それが結果的にFASTととても相性が良かったため、FASTを上手く使いこなしていました。

そのチームでは枠数制限も問題にならず、結果的には枠数を余らせるほどでした。

一方、別のスクラムチームでは、従来の1人1タスク制に慣れていたため、スウォーミング文化があまり根付いていない現状がありました。

その結果このチームでは枠数が複数立ち上がったままタスクの並列開発化が進んでいました。

これらチームを統合しコレクティブを組成してFASTを開始した結果、以下のような事象が発生しました。

  • 枠数の上限を常に全部使い切ろうとする
  • 加えて運用タスク用に残していた枠で新規開発を行う

一部のプロダクトではなく全体のプロダクト課題にメンバーが向き合えるようになったことは良かったのですが、その結果並列で様々な課題に向き合うという動きとなってしまい、当初の理想であった機動的な開発ができているとは言い切れない状況であったと思います。

得られた学びと次期への活かし方

この期では以下の学びを得ました:

  • 新しいフレームワーク導入時は既存チームの文化や働き方がそのまま持ち込まれる可能性がある
  • スウォーミング文化が根付いていないチームではFAST導入前の準備が重要となる

この時期は枠数制限の重要性が認識されておらず、だんだんおざなりになっていたのですが、次期では改めてその重要性と向き合うことになりました。

「品質と効率の両立」期(2024年11月〜2025年1月)

この期の位置づけ

この期は、「全体のプロダクト課題を組織全体が認知し、機動的な開発が推進できている」に対してさらに進展させようとする動きが多かったように思います。

品質課題への対応

この時期は、障害の発生が通常より多くなるなど、品質面での課題が顕在化した時期でもありました。

FAST導入の影響もあったと思われる一方、前述のタイトなスケジュールなど、それ以外の要因も複数あったと考えられています。

先ほどの話にも関わりますが、枠数を使い切るということは、それだけエンジニアリソースが分散し、1つの枠あたりの人数が少なくなることを意味します。

また、各機能ごとにキーパーソンとなる人が全ての枠に入ることはできないため、開発物の品質が下がる可能性もあります。

こうした状況を受け、エンジニアリソースの集中を目指し、通常開発の枠数をそれまでより半分ほどに大幅に制限しました。

改善専用の枠の設置

この時期の重要な変化として、改善専用の枠が正式に設置されていることが挙げられます。

改善専用の枠では、アラート対応やCSからのお問い合わせ対応、上記対応以外の時間はアラート削減の改善を実施するというルールを設けていました。

これにより、従来後回しになりがちだった改善・運用系のタスクに取り組むことができるようになりました。

得られた学びと次期への活かし方

この期では以下の学びを得ました:

  • 枠数制限により、足りない枠の中で何に集中するべきかを考えるきっかけになった
  • 改善専用の枠により、運用・改善タスクに組織的に取り組むことが可能になった
  • 枠が少なくなることでメンバーの配置に余裕が出て、枠ごとに必要となるケイパビリティを有したメンバーを呼び込みやすくなった

品質と効率の基盤は整ったものの、チーム固定化による新たな課題が見えてきたため、次期では組織全体の最適化に焦点を当てることになりました。

「組織全体最適化」期(2025年2月〜現在)

この期の位置づけ

この期は、「多能工組織」に向けた透明性確保と協働促進の動きが特に見られました。

チーム間の壁を取り払い、コレクティブ全体での最適化を図るための取り組みが様々行われました。

前期で構築した品質と効率の基盤の上に、組織全体の透明性向上とチーム間協働の促進に取り組んでいるのが特徴的です。

チーム固定化による安定化とその副作用

この時期には、前期までの品質課題や枠数制限による制約の中で、各チームが独自の文化を芽生えさせながら、ある程度チームを固定化させて開発を安定させようとする動きが広がりました。

また、ビジネス上の重要な取り組みが複数並行して進む中で、各チームが個別に成果を出すことに集中する雰囲気も強まりました。

しかし、この固定化の動きの副作用として、コレクティブが個別チームの寄せ集めに見える状況、チーム間の繋がりの希薄化、FAST自体の形骸化といった課題が生まれています。

透明性の向上

こうした課題に対応するため、この時期の大きな取り組みとして、マーケットプレイスの改善によるタスクの透明性向上が挙げられます。

障害対応、問い合わせ、障害時のポストモーテムで上がった改善タスクなどの可視化、運用/改善/新規開発タスクをマーケットプレイス上で同列に扱う、「次に取り組むべきタスク」を議論できる素地の整備といった可視化が進みました。

ボトムアップでの改善

また、チーム間の協働促進に向けて、特定のメンバーが主導する改善の動きが活発化しました。

内部品質や外部品質観点を改善する枠の組成、非機能要件を監視して、適切にエスカレーションする枠の組成、トップダウンで決めるのではなくPdM(プロダクトマネージャー)、EM(エンジニアリングマネージャー)、エンジニア、デザイナーを巻き込んだOKR(目標と主要な結果)の検討などが行われました。

ただし、全員が改善に取り組めていたわけではなく、特定のメンバーが改善を主導するという状態です。

これらは記事のまとめでも書いていますが、これから向き合うべき課題となっています。

得られた学びと現在の取り組み

この期では以下の学びを得ました:

  • 全体へ目を向けられていないチームの固定化の場合、安定感はもたらすが副作用として個別チームの寄せ集まりに見える状況やチーム間の繋がりの希薄化が生じる可能性がある
  • マーケットプレイスの改善により、タスクの透明性向上とタスク主導の運営に向けた取り組みが進んだ
  • ボトムアップの改善はよかったが実態として特定のメンバーが主導する形となっており、特定のメンバーに負荷が偏ってしまわないような工夫が必要

これらの課題に対し、チーム毎の良さは活かしつつ、コレクティブ全体のまとまりのある状態を目指す立て直しが進められています。

理想状態への軌跡と現在地

3つのフェーズを経て、元々の課題を振り返ると、機能領域に閉じた開発の課題や組織成長・異動に伴う調整コストといった問題に対して、以下のような進展が見られています。

全体のプロダクト課題を組織全体が認知し、機動的な開発が推進できている

マーケットプレイスの改善により、コレクティブ内のタスクの透明性が向上し、運用/改善/新規開発タスクを同列に扱えるようになりました。ただし、各チームで独自文化が芽生え、チーム間の協働の自然発生やコレクティブ全体のまとまりの強化が課題として残っています。

多能工組織への移行

枠ごとに必要となるケイパビリティを有したメンバーを呼び込みやすくなり、チームによってはディスカバリーに参入するエンジニアや、エンジニアと共同してAIツールを駆使して体験設計をするデザイナーもちらほら出てくるようになりました。

一方でまだ1人のメンバーが様々な種類の業務に対応できる状態には至っておらず、改善活動も特定のメンバーが主導する形になりやすい状況です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?弊社でFASTを導入した約8ヶ月間の変遷についてお話させていただきました。

FAST導入は3つのフェーズを経て進化してきており、各フェーズで異なる課題と学びがありました。「プロダクト提供価値を高める模索」期から、「品質と効率の両立」期を経て、現在は「組織全体最適化」期にあり、そこでの課題改善に取り組んでいます。

現在残っている課題として、チーム間協働の促進や組織全体の最適化がありますが、これらも様々な実験を通して着実に改善を積み重ねることで、理想とする開発組織に近づけるようにしていきたいと考えています。

今後もFASTの進化と共に、より良い開発組織の実現を目指していきます。

イベント案内

7月にアジャイルやFASTをテーマにしたイベントを開催します!
どちらもオンライン / オフラインのハイブリッド開催で、オフラインでは懇親会もご用意しています。ぜひご参加ください!

7月17日(木)19:00- 「アジャイル×AIの今と未来を語る」日本にアジャイルを広めた先駆者・平鍋氏とログラスCTOが「アジャイル × AI」をテーマに対談します。
FASTについてもテーマに取り上げ、両者の視点から語ります。

7月24日(木)19:00-「Loglass Tech Talk vol.6 FAST実践のリアル〜壁にぶつかり、悩み、試し続けた1年間〜」FASTを実践した1年間のリアルな苦悩や試行錯誤を、エンジニア、QA、PdM、デザイナーといった各ロールの視点から発信します!

PdMとデザイナーが感じた「FAST」導入の1年間 〜戸惑いを乗り越え、見えてきたもの〜

こんにちは、株式会社ログラスでプロダクトマネージャーをしております宮本(@oju8)と、プロダクトデザイナーをしている高橋(@NEKO_NINGENN)です。

ログラスでは「Loglass 経営管理」プロダクトにおいて、2024年8月より「FAST」というアジャイル開発フレームワークに挑戦しています。
日本ではあまり前例のないアジャイル開発フレームワークであり、プロダクトマネージャーやデザイナーの取り組み方にも大きな変化をもたらしました。

本記事では、FAST導入から現在を振り返り、現場でFASTによるアジャイル開発を経験してきた私たち(PdMの宮本、デザイナーの高橋)2名の視点から、率直な所感や気付きをお伝えします。

PdMの視点:広がるスコープと、全員で取り組むプロダクトマネジメント

Writer: 宮本

ログラスでPdMをしております、宮本(@oju8です。
今回はFAST導入とその変化について私なりにまとめさせていただきます。

「Loglass 経営管理」のプロダクトチームにFASTが導入される前は、3つのスクラムチームが並列でプロダクト開発を行なっていました。それが2024年8月、FASTの導入で1チームへと統合されるという大きな変化がありました。

当時、FASTを導入するに至った経緯や想いについては、昨年の「開発生産性Conference 2024」で登壇した、伊藤(当時VPoE・現CTO)の講演資料がありますので、併せてご覧ください。

正直なところ、当時はなぜFAST導入という大きな変化を行うのか、その意図が完全に理解できておらず、戸惑いを感じていました。

以前は担当チームのバックログを見れば全体感が把握できる状態でしたが、全体を1チームで見るようになったことで、PdMとして見るべき範囲が尋常じゃなく広くなりました。

「プロダクトの未来(ロードマップ)」について考えることはもちろん、目下取り組みたいユーザー課題解決のための施策についても考える必要があります。

さらに、不具合発生時の品質問題対応にも当然向き合う必要があり、機能開発以外の課題にも対応する必要が出てきました。今もプロダクトマネージャーが少ない状況ですが、当時は私含めて2名のPdMで臨機応変に対応する必要があり、目の前の事柄への対処から中長期的な取り組みまで、広範囲な領域を考え意思決定する場面が増えました。

こうした広範な領域を見る難しさは、導入当初から今も感じています。

PdMとしての視座が自然と上がった

そのような中で、プロダクト開発をスムーズに進めるために掴んだヒントは、プロダクトの方向性や進捗を繰り返し共有することの重要性です。

「プロダクト戦略」や「次に取り組みたい課題」といった重要な情報は、一度伝えただけではなかなか全員に浸透しません。皆が同じ認識を持ち、前に進むためには、時間を確保して何度も繰り返し説明することが非常に大切だと実感しています。特に「FAST ミーティング」での会議体などを活用し、根気強く共有を続けることが鍵だと考えています。

「FASTミーティング」のアジェンダの1つに「鼓舞タイム」と呼ばれる、メンバーを鼓舞するための時間があるのですが、個人的には「方針を揃えていく」場として捉える方が、その本質を表していると考えています。

FASTという新しいアジャイル開発フレームワークに携われることは、これまでのスクラム開発とは異なり、私にとって新しい経験であり率直に面白いと感じています。

特にプロダクト全体のことを考える視点が高まったことは、非常にポジティブな変化です。

以前は担当領域に限定して考えることが多かったのですが、全体を見るようになったことで、プロダクト全体の方向性や、機能の優先順位付け、ビジネスサイドとの折り合いの付け方など、PdMとしての視座が自然と上がったと感じています。

これはFASTの導入によって得られた大きな収穫であり、難しさとは表裏一体の面白さだと感じています。

プロダクト組織全体でもっと顧客理解を深められるようにしていきたい

今後の展望として、いま最も重要だと考えているのは、顧客理解をPdMだけではなく開発組織全体で深めていくことです。

個人的には、プロダクトマネジメントは「プロダクトマネージャー」という名前がついているからPdMだけがやるのではなく、開発に関わる全員で取り組むべきだと考えています。

その根幹となるのが、お客様の理解です。

現状、顧客理解は組織全体として弱い部分があると感じており、その原因はPdMの能力だけでなく、顧客理解を深めるための仕組みが存在していないことや、顧客からの一次情報の共有方法が定まっていないことなど、様々な観点からの課題があります。 こうした課題を一つずつ解決し、プロダクト組織全体で顧客理解を深められるようにしていきたいです。

もう一つは、PdM組織以外の方々との連携です。エンジニアリングマネージャーやビジネスサイド、そしてデザイン組織といった、他の組織・部署との連携を強化していくことです。

私がマネージャーになったこともあり、今後は他のチームや組織と積極的に連携し、何を共通の課題として捉え、どう解決していくか、組織全体として足並みを揃えて進めていくための仕組みを作っていきたいと考えています。

こうした連携を通じて、プロダクト組織はもちろん、FASTも含めた開発組織全体としてプロダクトの成功に貢献していけるよう、取り組んでいきたいです。

プロダクトデザイナーの視点:変化の波に乗る難しさと、自律性が生む面白さ

Writer: 高橋

プロダクトデザイナーの高橋 (@NEKO_NINGENN) です。今回「私から見たFAST」というテーマで、プロダクトデザイナーとして1年弱、FASTで取り組んできた所感を綴りたいと思います。

アジャイル未経験、入社してすぐFASTへ

私がログラスに入社したのは、まさにFASTが導入される直前でした。入社してまだ2ヶ月というタイミングで、かつ前職がウォーターフォール開発だったため、ようやく慣れてきたスクラムのリズムから一気に環境が変わったことに、まず大きな戸惑いがありました。

「何がなんだか分からない」というのが正直なファーストインプレッションでした。

特に大変だったのは、チーム編成が非常に頻繁に変わっていくことです。

経営管理プロダクトのFASTでは、「バリューサイクル*1」を2〜3日としています。
そのため、時には2日でチームが解散・再編成されることもあり、入社2ヵ月の私は、初対面のエンジニアの方々と即座に協力して開発を進める状況に何度も出くわしました。

お互いをよく知らない状態から始まり、即興的に開発を進め、「お疲れ様でした、またね」というサイクルに慣れるのに最初は苦労しました。
入社したばかりで会社に慣れることと、FASTという新しいフレームワークに慣れることが同時に進行し、とにかく慣れることに日々必死だった感覚があります。

経験を分かち合い、学び合え

入社当時の私は「レポート」と呼ばれる、「Loglass 経営管理」のメイン機能の概要は把握していましたが、それ以外の機能は理解が浅い状態でした。

FAST導入後には、データを取り込む機能など、新しい機能領域のデザインを担当することになりました。

FASTミーティングは、OST(オープン・スペース・テクノロジー)形式で行われる、次のバリューサイクルの活動を決めるミーティングで、自らの意思でバリューサイクル内のチームに出入りすることができます。

自分の意思で新しい機能領域のデザインで価値貢献しようと選んだのですが、キャッチアップに時間がかかり、キャッチアップだけで1つのバリューサイクルが終わってしまい、何も追加のバリューを出せないという状況もありました。

FASTのスピード感に乗れないこと、そして入社した会社でどうバリューを出していけば良いのかという不安も重なり、非常に焦りを感じたのを覚えています。

こうした戸惑いを乗り越え、少しずつ開発を進められるようになったきっかけの一つは、チームの流動性を少し下げて、メンバーを固定する期間があったことです。メンバーが毎回変わると、チームとして共通の「リズム」が生まれにくく、その都度リセットされてしまいます。

しかし、一定期間同じメンバーで活動することで、チームならではの振り返りの仕方など、開発のリズムが自然と出来上がり、進めやすさを感じるようになりました。

FASTの原則の1つとして「経験を分かち合い、学び合え」というものがあるのですが、まさに日々のバリューサイクルから得た経験から学び、共有・蓄積されていくことで自身もチームも成長していくことを実感しました。

FASTという新しいフレームワークには、難しさだけでなく面白さも多くあります。特に、その自由度の高さが、メンバーの能力を半ば強制的に引き上げてくれる点は面白いと感じています。

前職のウォーターフォール型の開発では、プロセスや承認フローがしっかり決まっており、それに従っていれば問題なく進みますが、「もっとこうしたら良くなるのでは?」といった自律的な提案や変更の機会はほとんどなく、提案する際はかなり慎重に行う必要がありました。

FASTでは、「こうすべきだ」と思った人が自由に発信・提案し、変えたい意思がある人が自分で提案して進め方を変えていける文化が当たり前にあるのは素晴らしい点です。

また、学びの共有が非常にポジティブに行われていることも印象的です。「学び(しくじり)」のような、うまくいかなかった経験もオープンに共有され、チーム全体で学ぶ姿勢があります。
これまでの職場では、こうした学びの共有は特別なイベントでなければ難しかったのが、FASTでは日々の開発の中で気軽に共有できる点が、チーム全体が成長できるフレームワークになっていると感じさせてくれます。

今後の展望として、プロダクトデザイナーとして「使い勝手の検証・改善」を強化していきたいと考えています。

現状、チーム単位での検証が十分ではないと感じており、リリース前や実装前に「この使い勝手で本当に良いか」をしっかり検証するプロセスを回していきたいと考えています。

まずは小さく始め、成果が出たらFAST内で共有して他のメンバーも巻き込んでいきたいです。

私自身もアジャイル開発に携わってまだ経験も浅いため、もっと理解を深めたい、他の方々の経験談を知りたいという思いから、「スクラムフェス福岡2025」に自発的に参加しました。

セッションやスクフェス参加者の方々との会話を通して「スクラムやFASTは単なる開発手法ではなく、職種を超えて価値を届ける文化そのものなのだ」と気付けたことが大きかったです。これからもアジャイル開発への理解をもっと深めていきたいと考えています。

また、FASTコレクティブを超えて組織レベルで取り組みたいこととして、経営管理以外のプロダクトを担当するデザイナー間の連携を強め、デザイン品質の底上げを目指したいです。

「Loglass 経営管理」のコレクティブの周囲には、新規事業等、他プロダクト領域も存在します。
マルチプロダクトの視点、さらにはデザインチーム全体としてユーザーテストなどの取り組みを広げ、組織的に使い勝手の品質向上に取り組んでいくことが重要だと考えています。
そこから得られた学びは、コレクティブ全体にも積極的に共有していきたいです。

来年の今頃、自分自身、プロダクト組織、そしてデザインチームがどのような形で成長しているかが楽しみです。

おわりに

Writer: 編集部

プロダクトマネージャーとプロダクトデザイナー双方から、FAST導入によるプロダクト開発体制の変化に伴い、導入当初は戸惑いや難しさを感じた一方で、プロダクト全体の視座向上、自律性の促進、そしてポジティブな学びの共有文化といった、多くのポジティブな側面も受け止めています。

今後は、顧客理解の開発組織全体への浸透と、他組織との連携強化に向けた仕組みづくり等、プロダクト開発をさらに加速させるための重要な鍵となっていくでしょう。

次回の「#私から見たFAST」シリーズ第4弾は「FASTを導入してみたログラス開発チームの変遷」というテーマで、導入から現在に至る変化や取り組みをアジャイルコーチ視点で紹介していきます。次回もお楽しみに。

イベント案内

7月にアジャイルやFASTをテーマにしたイベントを開催します!
どちらもオンライン / オフラインのハイブリッド開催で、オフラインでは懇親会もご用意しています。ぜひご参加ください!

7月17日(木)19:00- 「アジャイル×AIの今と未来を語る」日本にアジャイルを広めた先駆者・平鍋氏とログラスCTOが「アジャイル × AI」をテーマに対談します。
FASTについてもテーマに取り上げ、両者の視点から語ります。

7月24日(木)19:00-「Loglass Tech Talk vol.6 FAST実践のリアル〜壁にぶつかり、悩み、試し続けた1年間〜」FASTを実践した1年間のリアルな苦悩や試行錯誤を、エンジニア、QA、PdM、デザイナーといった各ロールの視点から発信します!

*1:*1: バリューサイクル: FASTにおける活動サイクル。スクラムでいうスプリントに相当する概念。バリューサイクルの変わり目で「FASTミーティング」を実施しています。