FASTを導入したログラス開発チームの変遷

はじめに

本記事は、開発生産性カンファレンスに向けて発信する、ログラスで導入したスケーリングフレームワークFASTに関する連載記事「#私から見たFAST」シリーズの4記事目です。

FAST導入の取り組みの変遷をお伝えできればと思います。

内容は、弊社エンジニアの粟田とアジャイルコーチとして参画いただいている今井氏にインタビューを行い、その内容をもとに福土が記事を構成しました。

なお、FASTの詳細な考え方ややり方などについては詳しく触れません。
詳しい情報を知りたい方は、下記をご参照ください。
FAST Guide

FAST導入の背景と理想状態

ログラスでは、従来複数のスクラムチームで開発を行っていましたが、以下のような課題を抱えていました:

  • 機能領域に閉じた開発の課題
  • 組織成長・異動に伴う調整コスト

FAST導入前は各機能担当のチームが固定でした。

チームが固定であることは特定の機能領域に閉じたディスカバリーや機能開発であれば効率的です。

ただプロダクトの規模が大きくなるにつれ、プロダクト戦略の中で1つの機能領域に閉じない提供価値を模索する必要があり、今までにない密な機能横断的な連携が必要な状況でした。

これによってチーム間の連携にかかるコストが徐々に大きくなっていました。

また、新規事業立ち上げによる異動が発生し始め、メンバーの配置変更や新しいチーム編成に伴う調整コストも都度発生していました。

特定のドメイン知識を有する開発者がチームから離れることで、知識が少数のメンバーに属人化し、開発速度の低下やリスクの集中といった課題もありました。

これらの課題は、組織の拡大や既存社員の新規事業への異動によって、今後さらに顕在化してくることが予想される状況という背景でFASTを導入しないかという話が上がっていました。

理想状態

ログラスではFAST導入により、いくつかの理想状態を目指しています。

  • 全体のプロダクト課題を組織全体が認知し、機動的な開発が推進できている
  • 多能工組織への移行

多能工組織について補足すると、こちらは専門性を保ちながらも、1人のメンバーが複数の業務に対応できるような人材を育成し、必要に応じて異なる領域でも貢献できる組織を指しています。

ログラスにおいてもプロダクト戦略上ドメインである経営管理全体のビジネスにフォーカスして課題解決を行う上で開発組織が多能工であることが必要であると考え、こういった理想状態を目指していました。

FASTは、最小限の構造と流動的なチーミングを通じて適応性と創発を実現する超軽量なスケーリングフレームワークであるため上記の理想状態を目指す上で適切と判断し、導入に至っています。

この記事を読む上での前提知識

この記事を理解するために、以下の概念を説明します:

  • コレクティブ:複数の機能開発チームを統合したチーム単位
  • バリューサイクル:FASTにおける開発サイクルの単位。このバリューサイクルごとにチーム編成を見直す
  • マーケットプレイス:メンバーが取り組みたい活動を提案・説明し、他のメンバーがその中から参加したい活動を選択することで、自然にチームが形成される仕組み
  • スウォーミング:複数のメンバーがSwarmして(群がるようにして)1つのタスクに集中して取り組む協働スタイル。開発物のリードタイムを短くし、チームの問題解決能力を向上させ、チーム内のナレッジシェアを促進させる効果がある
  • 枠(スロット):特定のタスクや目的のために編成される作業枠。従来の固定チームとは異なり、必要に応じてメンバーが流動的に参加する。ログラス独自の呼び方
  • 枠数制限:カンバンのWIP制限を流用したもの。枠の最大数を決めておくことで、並列に活動できる最大のチーム数を制限し、スループットの向上やチーム間の協力が促進されるプラクティス。ログラス独自の呼び方

理想状態に向けた3つのフェーズ

以下では、FAST導入から2025年6月現在までの約8ヶ月間の変遷を3つの時期に分けてご紹介します。

「プロダクト提供価値を高める模索」期(2024年8月〜10月)

この期の位置づけ

この期は、「全体のプロダクト課題を組織全体が認知し、機動的な開発が推進できている」に向けた初期の取り組みがあったように感じます。

当時の状況

この時期の大きな背景として、プロダクトの提供価値の優先順位づけが複雑な状況にあったことが挙げられます。

スタートアップ特有のビジネス環境の変化が激しく、お客様との案件が多数並行して進む中、機能単位での意思決定が求められる場面が多くありました。

また、ロードマップは非常にタイトなスケジュールとなっており、現実的にリリースできる機能数とのバランス調整が困難な状況でした。

こうした状況下で、FAST導入初期は、複数の価値提供を可能な限り並行して模索するというマインドセットがメンバー間で強い時期でした。

FAST導入のアプローチと適応度の差

弊社では、まず各スクラムチームが個別にスクラムからFASTへ移行し、その後でチームを統合してコレクティブを形成するという段階的な導入を行いました。

この導入過程で、元々のスクラムチームによってFASTへの適応度に差が生まれています。

適応度に言及する上で重要なポイントは枠数制限です。

FAST提唱者であるQuinton Quartel氏が書いた記事ではカンバンのプラクティスをそのまま利用しているためWIP制限と言及されていますが、WIP制限を行わずにFAST活動が進む中で、それぞれのチームの進捗が遅く追跡も難しい状況となったという言及があります。

したがってログラスでもスクラムチームであった時に各チームにて枠数制限を設けてFASTへの移行を図りました。

一部のスクラムチームでは、スウォーミング文化が根付いており、それが結果的にFASTととても相性が良かったため、FASTを上手く使いこなしていました。

そのチームでは枠数制限も問題にならず、結果的には枠数を余らせるほどでした。

一方、別のスクラムチームでは、従来の1人1タスク制に慣れていたため、スウォーミング文化があまり根付いていない現状がありました。

その結果このチームでは枠数が複数立ち上がったままタスクの並列開発化が進んでいました。

これらチームを統合しコレクティブを組成してFASTを開始した結果、以下のような事象が発生しました。

  • 枠数の上限を常に全部使い切ろうとする
  • 加えて運用タスク用に残していた枠で新規開発を行う

一部のプロダクトではなく全体のプロダクト課題にメンバーが向き合えるようになったことは良かったのですが、その結果並列で様々な課題に向き合うという動きとなってしまい、当初の理想であった機動的な開発ができているとは言い切れない状況であったと思います。

得られた学びと次期への活かし方

この期では以下の学びを得ました:

  • 新しいフレームワーク導入時は既存チームの文化や働き方がそのまま持ち込まれる可能性がある
  • スウォーミング文化が根付いていないチームではFAST導入前の準備が重要となる

この時期は枠数制限の重要性が認識されておらず、だんだんおざなりになっていたのですが、次期では改めてその重要性と向き合うことになりました。

「品質と効率の両立」期(2024年11月〜2025年1月)

この期の位置づけ

この期は、「全体のプロダクト課題を組織全体が認知し、機動的な開発が推進できている」に対してさらに進展させようとする動きが多かったように思います。

品質課題への対応

この時期は、障害の発生が通常より多くなるなど、品質面での課題が顕在化した時期でもありました。

FAST導入の影響もあったと思われる一方、前述のタイトなスケジュールなど、それ以外の要因も複数あったと考えられています。

先ほどの話にも関わりますが、枠数を使い切るということは、それだけエンジニアリソースが分散し、1つの枠あたりの人数が少なくなることを意味します。

また、各機能ごとにキーパーソンとなる人が全ての枠に入ることはできないため、開発物の品質が下がる可能性もあります。

こうした状況を受け、エンジニアリソースの集中を目指し、通常開発の枠数をそれまでより半分ほどに大幅に制限しました。

改善専用の枠の設置

この時期の重要な変化として、改善専用の枠が正式に設置されていることが挙げられます。

改善専用の枠では、アラート対応やCSからのお問い合わせ対応、上記対応以外の時間はアラート削減の改善を実施するというルールを設けていました。

これにより、従来後回しになりがちだった改善・運用系のタスクに取り組むことができるようになりました。

得られた学びと次期への活かし方

この期では以下の学びを得ました:

  • 枠数制限により、足りない枠の中で何に集中するべきかを考えるきっかけになった
  • 改善専用の枠により、運用・改善タスクに組織的に取り組むことが可能になった
  • 枠が少なくなることでメンバーの配置に余裕が出て、枠ごとに必要となるケイパビリティを有したメンバーを呼び込みやすくなった

品質と効率の基盤は整ったものの、チーム固定化による新たな課題が見えてきたため、次期では組織全体の最適化に焦点を当てることになりました。

「組織全体最適化」期(2025年2月〜現在)

この期の位置づけ

この期は、「多能工組織」に向けた透明性確保と協働促進の動きが特に見られました。

チーム間の壁を取り払い、コレクティブ全体での最適化を図るための取り組みが様々行われました。

前期で構築した品質と効率の基盤の上に、組織全体の透明性向上とチーム間協働の促進に取り組んでいるのが特徴的です。

チーム固定化による安定化とその副作用

この時期には、前期までの品質課題や枠数制限による制約の中で、各チームが独自の文化を芽生えさせながら、ある程度チームを固定化させて開発を安定させようとする動きが広がりました。

また、ビジネス上の重要な取り組みが複数並行して進む中で、各チームが個別に成果を出すことに集中する雰囲気も強まりました。

しかし、この固定化の動きの副作用として、コレクティブが個別チームの寄せ集めに見える状況、チーム間の繋がりの希薄化、FAST自体の形骸化といった課題が生まれています。

透明性の向上

こうした課題に対応するため、この時期の大きな取り組みとして、マーケットプレイスの改善によるタスクの透明性向上が挙げられます。

障害対応、問い合わせ、障害時のポストモーテムで上がった改善タスクなどの可視化、運用/改善/新規開発タスクをマーケットプレイス上で同列に扱う、「次に取り組むべきタスク」を議論できる素地の整備といった可視化が進みました。

ボトムアップでの改善

また、チーム間の協働促進に向けて、特定のメンバーが主導する改善の動きが活発化しました。

内部品質や外部品質観点を改善する枠の組成、非機能要件を監視して、適切にエスカレーションする枠の組成、トップダウンで決めるのではなくPdM(プロダクトマネージャー)、EM(エンジニアリングマネージャー)、エンジニア、デザイナーを巻き込んだOKR(目標と主要な結果)の検討などが行われました。

ただし、全員が改善に取り組めていたわけではなく、特定のメンバーが改善を主導するという状態です。

これらは記事のまとめでも書いていますが、これから向き合うべき課題となっています。

得られた学びと現在の取り組み

この期では以下の学びを得ました:

  • 全体へ目を向けられていないチームの固定化の場合、安定感はもたらすが副作用として個別チームの寄せ集まりに見える状況やチーム間の繋がりの希薄化が生じる可能性がある
  • マーケットプレイスの改善により、タスクの透明性向上とタスク主導の運営に向けた取り組みが進んだ
  • ボトムアップの改善はよかったが実態として特定のメンバーが主導する形となっており、特定のメンバーに負荷が偏ってしまわないような工夫が必要

これらの課題に対し、チーム毎の良さは活かしつつ、コレクティブ全体のまとまりのある状態を目指す立て直しが進められています。

理想状態への軌跡と現在地

3つのフェーズを経て、元々の課題を振り返ると、機能領域に閉じた開発の課題や組織成長・異動に伴う調整コストといった問題に対して、以下のような進展が見られています。

全体のプロダクト課題を組織全体が認知し、機動的な開発が推進できている

マーケットプレイスの改善により、コレクティブ内のタスクの透明性が向上し、運用/改善/新規開発タスクを同列に扱えるようになりました。ただし、各チームで独自文化が芽生え、チーム間の協働の自然発生やコレクティブ全体のまとまりの強化が課題として残っています。

多能工組織への移行

枠ごとに必要となるケイパビリティを有したメンバーを呼び込みやすくなり、チームによってはディスカバリーに参入するエンジニアや、エンジニアと共同してAIツールを駆使して体験設計をするデザイナーもちらほら出てくるようになりました。

一方でまだ1人のメンバーが様々な種類の業務に対応できる状態には至っておらず、改善活動も特定のメンバーが主導する形になりやすい状況です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?弊社でFASTを導入した約8ヶ月間の変遷についてお話させていただきました。

FAST導入は3つのフェーズを経て進化してきており、各フェーズで異なる課題と学びがありました。「プロダクト提供価値を高める模索」期から、「品質と効率の両立」期を経て、現在は「組織全体最適化」期にあり、そこでの課題改善に取り組んでいます。

現在残っている課題として、チーム間協働の促進や組織全体の最適化がありますが、これらも様々な実験を通して着実に改善を積み重ねることで、理想とする開発組織に近づけるようにしていきたいと考えています。

今後もFASTの進化と共に、より良い開発組織の実現を目指していきます。

イベント案内

7月にアジャイルやFASTをテーマにしたイベントを開催します!
どちらもオンライン / オフラインのハイブリッド開催で、オフラインでは懇親会もご用意しています。ぜひご参加ください!

7月17日(木)19:00- 「アジャイル×AIの今と未来を語る」日本にアジャイルを広めた先駆者・平鍋氏とログラスCTOが「アジャイル × AI」をテーマに対談します。
FASTについてもテーマに取り上げ、両者の視点から語ります。

7月24日(木)19:00-「Loglass Tech Talk vol.6 FAST実践のリアル〜壁にぶつかり、悩み、試し続けた1年間〜」FASTを実践した1年間のリアルな苦悩や試行錯誤を、エンジニア、QA、PdM、デザイナーといった各ロールの視点から発信します!

PdMとデザイナーが感じた「FAST」導入の1年間 〜戸惑いを乗り越え、見えてきたもの〜

こんにちは、株式会社ログラスでプロダクトマネージャーをしております宮本(@oju8)と、プロダクトデザイナーをしている高橋(@NEKO_NINGENN)です。

ログラスでは「Loglass 経営管理」プロダクトにおいて、2024年8月より「FAST」というアジャイル開発フレームワークに挑戦しています。
日本ではあまり前例のないアジャイル開発フレームワークであり、プロダクトマネージャーやデザイナーの取り組み方にも大きな変化をもたらしました。

本記事では、FAST導入から現在を振り返り、現場でFASTによるアジャイル開発を経験してきた私たち(PdMの宮本、デザイナーの高橋)2名の視点から、率直な所感や気付きをお伝えします。

PdMの視点:広がるスコープと、全員で取り組むプロダクトマネジメント

Writer: 宮本

ログラスでPdMをしております、宮本(@oju8です。
今回はFAST導入とその変化について私なりにまとめさせていただきます。

「Loglass 経営管理」のプロダクトチームにFASTが導入される前は、3つのスクラムチームが並列でプロダクト開発を行なっていました。それが2024年8月、FASTの導入で1チームへと統合されるという大きな変化がありました。

当時、FASTを導入するに至った経緯や想いについては、昨年の「開発生産性Conference 2024」で登壇した、伊藤(当時VPoE・現CTO)の講演資料がありますので、併せてご覧ください。

正直なところ、当時はなぜFAST導入という大きな変化を行うのか、その意図が完全に理解できておらず、戸惑いを感じていました。

以前は担当チームのバックログを見れば全体感が把握できる状態でしたが、全体を1チームで見るようになったことで、PdMとして見るべき範囲が尋常じゃなく広くなりました。

「プロダクトの未来(ロードマップ)」について考えることはもちろん、目下取り組みたいユーザー課題解決のための施策についても考える必要があります。

さらに、不具合発生時の品質問題対応にも当然向き合う必要があり、機能開発以外の課題にも対応する必要が出てきました。今もプロダクトマネージャーが少ない状況ですが、当時は私含めて2名のPdMで臨機応変に対応する必要があり、目の前の事柄への対処から中長期的な取り組みまで、広範囲な領域を考え意思決定する場面が増えました。

こうした広範な領域を見る難しさは、導入当初から今も感じています。

PdMとしての視座が自然と上がった

そのような中で、プロダクト開発をスムーズに進めるために掴んだヒントは、プロダクトの方向性や進捗を繰り返し共有することの重要性です。

「プロダクト戦略」や「次に取り組みたい課題」といった重要な情報は、一度伝えただけではなかなか全員に浸透しません。皆が同じ認識を持ち、前に進むためには、時間を確保して何度も繰り返し説明することが非常に大切だと実感しています。特に「FAST ミーティング」での会議体などを活用し、根気強く共有を続けることが鍵だと考えています。

「FASTミーティング」のアジェンダの1つに「鼓舞タイム」と呼ばれる、メンバーを鼓舞するための時間があるのですが、個人的には「方針を揃えていく」場として捉える方が、その本質を表していると考えています。

FASTという新しいアジャイル開発フレームワークに携われることは、これまでのスクラム開発とは異なり、私にとって新しい経験であり率直に面白いと感じています。

特にプロダクト全体のことを考える視点が高まったことは、非常にポジティブな変化です。

以前は担当領域に限定して考えることが多かったのですが、全体を見るようになったことで、プロダクト全体の方向性や、機能の優先順位付け、ビジネスサイドとの折り合いの付け方など、PdMとしての視座が自然と上がったと感じています。

これはFASTの導入によって得られた大きな収穫であり、難しさとは表裏一体の面白さだと感じています。

プロダクト組織全体でもっと顧客理解を深められるようにしていきたい

今後の展望として、いま最も重要だと考えているのは、顧客理解をPdMだけではなく開発組織全体で深めていくことです。

個人的には、プロダクトマネジメントは「プロダクトマネージャー」という名前がついているからPdMだけがやるのではなく、開発に関わる全員で取り組むべきだと考えています。

その根幹となるのが、お客様の理解です。

現状、顧客理解は組織全体として弱い部分があると感じており、その原因はPdMの能力だけでなく、顧客理解を深めるための仕組みが存在していないことや、顧客からの一次情報の共有方法が定まっていないことなど、様々な観点からの課題があります。 こうした課題を一つずつ解決し、プロダクト組織全体で顧客理解を深められるようにしていきたいです。

もう一つは、PdM組織以外の方々との連携です。エンジニアリングマネージャーやビジネスサイド、そしてデザイン組織といった、他の組織・部署との連携を強化していくことです。

私がマネージャーになったこともあり、今後は他のチームや組織と積極的に連携し、何を共通の課題として捉え、どう解決していくか、組織全体として足並みを揃えて進めていくための仕組みを作っていきたいと考えています。

こうした連携を通じて、プロダクト組織はもちろん、FASTも含めた開発組織全体としてプロダクトの成功に貢献していけるよう、取り組んでいきたいです。

プロダクトデザイナーの視点:変化の波に乗る難しさと、自律性が生む面白さ

Writer: 高橋

プロダクトデザイナーの高橋 (@NEKO_NINGENN) です。今回「私から見たFAST」というテーマで、プロダクトデザイナーとして1年弱、FASTで取り組んできた所感を綴りたいと思います。

アジャイル未経験、入社してすぐFASTへ

私がログラスに入社したのは、まさにFASTが導入される直前でした。入社してまだ2ヶ月というタイミングで、かつ前職がウォーターフォール開発だったため、ようやく慣れてきたスクラムのリズムから一気に環境が変わったことに、まず大きな戸惑いがありました。

「何がなんだか分からない」というのが正直なファーストインプレッションでした。

特に大変だったのは、チーム編成が非常に頻繁に変わっていくことです。

経営管理プロダクトのFASTでは、「バリューサイクル*1」を2〜3日としています。
そのため、時には2日でチームが解散・再編成されることもあり、入社2ヵ月の私は、初対面のエンジニアの方々と即座に協力して開発を進める状況に何度も出くわしました。

お互いをよく知らない状態から始まり、即興的に開発を進め、「お疲れ様でした、またね」というサイクルに慣れるのに最初は苦労しました。
入社したばかりで会社に慣れることと、FASTという新しいフレームワークに慣れることが同時に進行し、とにかく慣れることに日々必死だった感覚があります。

経験を分かち合い、学び合え

入社当時の私は「レポート」と呼ばれる、「Loglass 経営管理」のメイン機能の概要は把握していましたが、それ以外の機能は理解が浅い状態でした。

FAST導入後には、データを取り込む機能など、新しい機能領域のデザインを担当することになりました。

FASTミーティングは、OST(オープン・スペース・テクノロジー)形式で行われる、次のバリューサイクルの活動を決めるミーティングで、自らの意思でバリューサイクル内のチームに出入りすることができます。

自分の意思で新しい機能領域のデザインで価値貢献しようと選んだのですが、キャッチアップに時間がかかり、キャッチアップだけで1つのバリューサイクルが終わってしまい、何も追加のバリューを出せないという状況もありました。

FASTのスピード感に乗れないこと、そして入社した会社でどうバリューを出していけば良いのかという不安も重なり、非常に焦りを感じたのを覚えています。

こうした戸惑いを乗り越え、少しずつ開発を進められるようになったきっかけの一つは、チームの流動性を少し下げて、メンバーを固定する期間があったことです。メンバーが毎回変わると、チームとして共通の「リズム」が生まれにくく、その都度リセットされてしまいます。

しかし、一定期間同じメンバーで活動することで、チームならではの振り返りの仕方など、開発のリズムが自然と出来上がり、進めやすさを感じるようになりました。

FASTの原則の1つとして「経験を分かち合い、学び合え」というものがあるのですが、まさに日々のバリューサイクルから得た経験から学び、共有・蓄積されていくことで自身もチームも成長していくことを実感しました。

FASTという新しいフレームワークには、難しさだけでなく面白さも多くあります。特に、その自由度の高さが、メンバーの能力を半ば強制的に引き上げてくれる点は面白いと感じています。

前職のウォーターフォール型の開発では、プロセスや承認フローがしっかり決まっており、それに従っていれば問題なく進みますが、「もっとこうしたら良くなるのでは?」といった自律的な提案や変更の機会はほとんどなく、提案する際はかなり慎重に行う必要がありました。

FASTでは、「こうすべきだ」と思った人が自由に発信・提案し、変えたい意思がある人が自分で提案して進め方を変えていける文化が当たり前にあるのは素晴らしい点です。

また、学びの共有が非常にポジティブに行われていることも印象的です。「学び(しくじり)」のような、うまくいかなかった経験もオープンに共有され、チーム全体で学ぶ姿勢があります。
これまでの職場では、こうした学びの共有は特別なイベントでなければ難しかったのが、FASTでは日々の開発の中で気軽に共有できる点が、チーム全体が成長できるフレームワークになっていると感じさせてくれます。

今後の展望として、プロダクトデザイナーとして「使い勝手の検証・改善」を強化していきたいと考えています。

現状、チーム単位での検証が十分ではないと感じており、リリース前や実装前に「この使い勝手で本当に良いか」をしっかり検証するプロセスを回していきたいと考えています。

まずは小さく始め、成果が出たらFAST内で共有して他のメンバーも巻き込んでいきたいです。

私自身もアジャイル開発に携わってまだ経験も浅いため、もっと理解を深めたい、他の方々の経験談を知りたいという思いから、「スクラムフェス福岡2025」に自発的に参加しました。

セッションやスクフェス参加者の方々との会話を通して「スクラムやFASTは単なる開発手法ではなく、職種を超えて価値を届ける文化そのものなのだ」と気付けたことが大きかったです。これからもアジャイル開発への理解をもっと深めていきたいと考えています。

また、FASTコレクティブを超えて組織レベルで取り組みたいこととして、経営管理以外のプロダクトを担当するデザイナー間の連携を強め、デザイン品質の底上げを目指したいです。

「Loglass 経営管理」のコレクティブの周囲には、新規事業等、他プロダクト領域も存在します。
マルチプロダクトの視点、さらにはデザインチーム全体としてユーザーテストなどの取り組みを広げ、組織的に使い勝手の品質向上に取り組んでいくことが重要だと考えています。
そこから得られた学びは、コレクティブ全体にも積極的に共有していきたいです。

来年の今頃、自分自身、プロダクト組織、そしてデザインチームがどのような形で成長しているかが楽しみです。

おわりに

Writer: 編集部

プロダクトマネージャーとプロダクトデザイナー双方から、FAST導入によるプロダクト開発体制の変化に伴い、導入当初は戸惑いや難しさを感じた一方で、プロダクト全体の視座向上、自律性の促進、そしてポジティブな学びの共有文化といった、多くのポジティブな側面も受け止めています。

今後は、顧客理解の開発組織全体への浸透と、他組織との連携強化に向けた仕組みづくり等、プロダクト開発をさらに加速させるための重要な鍵となっていくでしょう。

次回の「#私から見たFAST」シリーズ第4弾は「FASTを導入してみたログラス開発チームの変遷」というテーマで、導入から現在に至る変化や取り組みをアジャイルコーチ視点で紹介していきます。次回もお楽しみに。

イベント案内

7月にアジャイルやFASTをテーマにしたイベントを開催します!
どちらもオンライン / オフラインのハイブリッド開催で、オフラインでは懇親会もご用意しています。ぜひご参加ください!

7月17日(木)19:00- 「アジャイル×AIの今と未来を語る」日本にアジャイルを広めた先駆者・平鍋氏とログラスCTOが「アジャイル × AI」をテーマに対談します。
FASTについてもテーマに取り上げ、両者の視点から語ります。

7月24日(木)19:00-「Loglass Tech Talk vol.6 FAST実践のリアル〜壁にぶつかり、悩み、試し続けた1年間〜」FASTを実践した1年間のリアルな苦悩や試行錯誤を、エンジニア、QA、PdM、デザイナーといった各ロールの視点から発信します!

*1:*1: バリューサイクル: FASTにおける活動サイクル。スクラムでいうスプリントに相当する概念。バリューサイクルの変わり目で「FASTミーティング」を実施しています。

AI Engineering Summit に協賛およびエンジニア佐藤が登壇します

ログラスは6月18日(水)11:00〜18:30にオンラインで開催されるAI Engineering Summitに協賛しています。
ログラスも開発組織全体で取り組んでいるAI Engineeringをより盛り上げていきたいという思いで、今回スポンサーをさせていただきました。

AI Engineering Summit とは


「AI Engineering Summit」は、LLM・生成AIの活用や最先端のサービス開発に取り組むエンジニアの方々をお招きし、日本国内のAIエンジニアリングを加速させることを目的としたイベントです。(公式説明

登壇者の紹介

ログラスからはエンジニアの佐藤が登壇します。
ログラスでのCursorルールの考え方・育て方を事例としてお話をさせていただきます。
ぜひご視聴ください。(視聴申し込みはこちら

登壇時間

12:10〜12:50

タイトル

『「規約、知識、オペレーション」から考える中規模以上の開発組織のCursorルールの考え方・育て方』

詳細

AIエージェントツールであるCursorを導入したものの、「どのように使いこなすべきか」「ルールをどう整備していくべきか」に悩む中規模以上の開発組織のエンジニア向けに、Cursorルールの理想像と実践的な育て方を紹介します。
本セッションでは、Cursorルールを「コーディング規約」、「ドメイン知識」、「オペレーション」の3つに整理して、適切なCursorルールのあり方を掘り下げつつ、ルールを進化させるための考え方や育て方などを具体的に解説していきます。

イベント情報

ログラスでは今後AI関連のイベントを多数予定しています。
ぜひご参加ください!

採用情報

ログラスではAI関連のポジションを積極採用中です!
ご興味がある方はぜひお気軽にご連絡ください。

横断チームメンバーがFASTに合流して見えた景色 〜「透明性」と「自律性」が生み出すプロダクト価値向上への取り組み〜

こんにちは、株式会社ログラスで「フロントエンドチーム」という横断チームでエンジニアをしております、浅井 (@mixplace) です。

今回は「#私から見たFAST」シリーズ第2弾の記事として、横断チームのいちメンバーとしての立ち位置から「FAST というアジャイル開発手法を導入したプロダクト開発チームとどう向き合っていたか」という視点で、FASTで一緒に取り組んでみて感じた気付きや学びについて記していきます。 

はじめに: プロダクトを横断する「フロントエンドチーム」で取り組んでいたこと

私は2024年夏よりフロントエンド領域の横断チームとして「フロントエンドチーム」を組成し、以下のような取り組みを横断的に行なっています。

  • フロントエンド技術基盤の改善
  • デザインシステムを構成するコンポーネント群の改善
  • 各開発チームがフロントエンド開発を円滑に進めていけるための技術支援

ちょうどチームトポロジーでいう「イネイブリングチーム」ならびに「プラットフォームチーム」で期待される振る舞いを行なっているイメージだとご理解いただければと思います。

この半年間、フロントエンドチームで扱っていた開発エピックの1つに「データ量増大でパフォーマンス劣化が見込まれる共通UIコンポーネントの内部構造の刷新を行なう」というものがありました。

「Loglass 経営管理」は多くの企業さまでご利用いただいておりますが、「現在ご利用の企業さまの2〜3倍の企業規模感でも快適に動作するか?」を定期的に確認しています。 その中で、Webブラウザパフォーマンスの劣化起因となるコンポーネントがあることがわかり、アーキテクチャの刷新を行なうことで改善できることがわかりました。 将来起きうるであろうパフォーマンス問題を、お客様のご利用環境で顕在化する前に対処すべく、横断チームの特性を活かし先手を打つことにしました。

デリバリーまでの流れとしては、以下の2つのフェーズに分けて進めていきました。

  1. 新しいUIコンポーネントの作成: フロントエンドチームが共通UIコンポーネントを新たに作成
  2. 既存利用箇所の置き換え: 経営管理プロダクトで用いているパフォーマンス劣化懸念のあるコンポーネントを上記(1)で開発したコンポーネントで置き換えていく

「Loglass 経営管理」のプロダクト開発は、FAST というアジャイル開発手法で日々活動しています。 プラットフォームチームとして品質の良いコンポーネントを開発しながらも、FAST の理解を深めていきました。

特に「2. 既存利用箇所の置き換え」のフェーズについては、「Loglass 経営管理」のプロダクトチームが FAST によるアジャイル開発プロセスで日々活動していることから、私も FAST の中に入って取り組むこととしました。 経営管理プロダクトにコンポーネントが導入され、パフォーマンスの向上が見られてはじめて価値といえるからです。 コンポーネントの開発活動を並行して、FASTの理解を深めていくこととしました。

実際に「FAST」のアジャイル開発プロセスに入るにあたって意識したこと

FAST というアジャイル開発に一緒に取り組むにあたって、まずは「FAST ガイド」を一読するようにしました。FASTの公式サイトで公開されていますので、一度読んでみることをお勧めします。(日本語ドキュメントもあります)

FAST - FAST Guide

FAST ガイドは、FASTを実践するためのルールやガイドラインをまとめたドキュメントで、 いわゆるスクラムでいう「スクラムガイド」に相当するものです。

私自身スクラムを通して過去3年ほど開発活動を行なってきましたが、この「FAST ガイド」はそのシンプルさに驚きつつも洗練された興味深いものでした。

特に私が注目したのは、「FASTの価値、原則、そして柱」という章です。

いずれもアジャイル開発全般に求められるものですが、FASTの中で開発活動を進めるにあたって、自分自身もチーム全体(FASTでは「コレクティブ」と呼称しています)で価値を最大化させるべく意識するようにしました。

具体的には以下の点にあたります。

FASTに入る前に: 現状の課題とやるべき理由を共有する

FASTには“コレクティブ”という概念があります。 ログラスでは「Loglass 経営管理」のプロダクト開発活動に取り組むメンバー全体を“コレクティブ”と定義し、プロダクトのディスカバリーからデリバリー、ビジネスゴールの達成までを担っています。

私はまずはじめに、コレクティブに対して「パフォーマンス劣化懸念のコンポーネントが存在しており、その解決に向けてフロントエンドチームが取り組んでいる」ことを、定期的にSlackで発信する活動を行いました。 現状課題と解決手段、また今後どうコレクティブに入って改善していきたいかを共有することで、プロダクトの課題を一緒に取り組みたい、必要なタイミングで一緒に協業できる体制を作りたかったためです。

FASTに入る前に: コレクティブメンバーの協力関係を築く

私がまず始めに取り組んだのは、コレクティブメンバーと信頼関係を築き、協力関係を得やすいようにすることでした。 FAST ミーティングに参加することはもちろんのこと、出社時にはコレクティブ内の多くのメンバーと意図的に雑談する時間を設けたりしました。 FASTの価値である「協働」「自律性」、FASTの原則である「チームプレーヤーであれ」を体現するためです。

特に品質(QA)面において、経営管理プロダクトのQAエンジニアとは、私がコレクティブに入る前から一緒にテスト分析設計を行なって協働を行なっていました。 理由はコンポーネントの内部構造刷新において、コンポーネント自体の品質を高めたかったからです。 共通UIコンポーネント自体の品質に問題があった場合、プロダクトへの導入やテストは一層困難な道のりとなってしまいます。

将来、コレクティブのメンバーと一緒にプロダクトに取り組むことになるため、アジリティを高める重要な活動であり、FASTの「コラボレーティブ」「チーム全体で価値を最大化する」という観点は通じるところだと思います。

透明性を保つ: いま取り組んでいること、これから取り組むことを公にする

フロントエンドチーム内で取り組んでいたコンポーネントの内部構造刷新に関わる活動アイテムについても、「現在取り組んでいること」「今後取り組むこと」を、ディスカバリーツリー形式にして、コレクティブに所属するメンバー誰もが見れる場所に掲示するようにしました。

ディスカバリーツリーとは、分解や進捗のトラッキング、そして高速な理解を可能にしつつ活動アイテム間に共通するコンテキストを持たせる上で有用な可視化ツールです。 FASTガイドより引用

ディスカバリーツリーの例。大項目の達成に必要なアクションを可視化している

また、コレクティブに入って一緒に取り組むようになってからは、“FAST ミーティング”の中で現在の状況を簡潔に共有するようにさせていただきました。

「今後の新機能開発」や「ユーザビリティの改善」に関わるディスカバリープロセスにおいても「新しいコンポーネントを利用して取り組むとパフォーマンス懸念が解消できそう、だからフロントエンドチームと連携しよう」といった動きがコレクティブ内にも見られるようになりました。

「今後取り組む新機能開発の際に使ってみよう」「コンポーネント置き換え作業を少し手伝ってみよう」という話題が各所からみられるようになり、協業が進むようになりました。

私自身もFASTで一緒に開発するにあたって、コンポーネントの仕様やフロントエンド実装にあたっての知識伝搬(ナレッジトランスファー)も進めることができ、コレクティブに対して寄与できた感覚が持てました。

おわりに: 自律性と透明性に向き合う大切さ

今回は、各機能開発チームを横断して活動する私が、どのようにして FAST を用いたアジャイル開発手法に向き合い、取り組んでいるかについてご紹介しました。

横断的チームから一時的に「FAST」のコレクティブに入って馴染みながら取り組めたのは、私がFASTガイドにある「FASTの価値」「FASTの原則「FASTの柱」にとても共感し、徐々に実践することができたからだと思います。

スクラムをはじめアジャイル開発の手法はいくつかありますが、その中でも FAST は「自律性」「適応性」「流動性」「コラボレーティブ」がより色濃く出たフレームワークだと感じます。特に、対話の姿勢、フォロワーシップマインドセットが必要不可欠と感じています。

自然とフォロワーシップでプロダクト開発を通してプロダクト価値を上げたい、価値の源泉を構築していきたい方々とは非常に親和性が高いと感じています。 この特徴こそが、部署を超えてプロダクトとして最適・最善と思われるアクションが推進され、プロダクトをより価値の高いものにしていく過程を実感できました。

大前提、プロダクトをより良くしたい、お客様により快適な経営分析体験を提供したい思いは、変わりません。 そのためにも、「目的の明示」「透明性」「自律性」が重要であることを、今回の開発活動を通して感じました。

最後になりますが、ログラスでは2025年7月3日〜4日に開催される「開発生産性Conference 2025」でGoldスポンサーとしてセッション講演とスポンサーブースを設置して参加させていただきます。 FASTに参加しているエンジニアやマネージャーが参加しますので、是非お越しいただきお話できたら嬉しいです。

次回の「#私から見たFAST」シリーズの記事は、「プロダクトマネージャーとFAST」「プロダクトデザイナーとFAST」というテーマで、プロダクトマネージャー・プロダクトデザイナーがFASTへどう向き合ってきたかを紹介したいと思います。次回もお楽しみに。

イベント案内

7月にアジャイルやFASTをテーマにしたイベントを開催します!
どちらもオンライン / オフラインのハイブリッド開催で、オフラインでは懇親会もご用意しています。ぜひご参加ください!

7月17日(木)19:00- 「アジャイル×AIの今と未来を語る」日本にアジャイルを広めた先駆者・平鍋氏とログラスCTOが「アジャイル × AI」をテーマに対談します。
FASTについてもテーマに取り上げ、両者の視点から語ります。

7月24日(木)19:00-「Loglass Tech Talk vol.6 FAST実践のリアル〜壁にぶつかり、悩み、試し続けた1年間〜」

FASTを実践した1年間のリアルな苦悩や試行錯誤を、エンジニア、QA、PdM、デザイナーといった各ロールの視点から発信します!

FASTにおけるオンボーディング

はじめに

ログラスは2025年7月3日-4日に開催される「開発生産性カンファレンス2025にGoldスポンサーとして協賛しており、7月3日14:00からはVPoEの飯田が登壇します
飯田の登壇に向けて、FASTについて色々な視点から知っていただくために、「#私から見たFAST」シリーズとして今週から4週連続で記事を公開します!

本記事は連載記事の第1弾です。
FASTにおけるオンボーディングについて、実際に経験したメンター(鈴木)とメンティー(石川)の両方の視点から、その効果や課題について共有したいと思います。

FASTとは?

ログラスではスケーリングフレームワークとしてFASTを採用し、プロダクト開発を進めています。

本記事ではFASTについての詳細な説明は省略します。
詳しくはFAST Guideをご覧ください。

また、ログラスがFASTにチャレンジすることになった経緯については以下の資料をご参照ください。

本記事で出てくる用語

  • コレクティブ:プロダクト全体を開発する人々。ログラスでは経営管理プロダクトを担う全員を指す。
  • チーム:コレクティブから流動的に作られる個別のチーム。通常、各メンバーは自身が選んだチームで活動する。
  • バリューサイクル:FASTにおける活動サイクル。ログラスでは2〜3日を1つのバリューサイクルの期間としている。
  • FASTミーティング:バリューサイクルの区切りで実施する打ち合わせ。情報の同期やチーム編成の見直しを実施する。

ログラスにおけるオンボーディング

ログラスでは、新メンバーのオンボーディングを3ヶ月のマイルストーンで区切って進めています。新メンバー(メンティー)にはメンターが1名つき、技術面や組織面でのサポートを行います。

まずはおおまかなオンボーディングの流れを説明します。

1ヶ月目:ドメインと組織文化への理解

最初の1ヶ月は、ログラスのドメインや組織文化に慣れることを重視します。

  • 経営管理プロダクトのドメイン知識を習得する
  • 開発環境のセットアップと基本的な開発フローを理解する
  • 軽めの機能改善や修正タスクを着手する
  •  FASTの考え方や進め方を理解する
2ヶ月目:コレクティブへの合流

2ヶ月目からはコレクティブに合流し、本格的に機能開発を進めていきます。

  • チームでの本格的な開発業務を開始する
  • チーム内でのコードレビューやペアプロを実施する
  • アラートや問い合わせを段階的に対応する
  • FASTミーティングへ参加する
3ヶ月目:自立したメンバーへ

3ヶ月目には、一人のエンジニアとして自立して開発を進められる状態を目指します。

  • 機能開発の一連の流れを自立して実施する
  • チーム内での知見共有やレビューへ積極的に参加する
  • アラートや問い合わせを主体的に対応する
  • 必要に応じて新しいチームへ参加する

この3ヶ月間のステップを通じて、新メンバーが無理なくチームに馴染み、かつ確実にスキルを身につけられるような環境作りを心がけています。

メンター(鈴木)からみたオンボーディング

メンターとして新メンバーのオンボーディングに関わった経験から、FASTにおけるオンボーディングの良かった点と課題・改善点を共有します。

良かった点

FASTの特徴的な点として、開発アイテムの選択の自由度が高いことが挙げられます。

  • 特定の機能や領域に限定されず、様々な開発アイテムを候補として検討できる
  • メンティーの興味や経験に合わせて、適切な難易度の課題を選択できる
  • 技術的な課題だけでなく、開発環境の改善やツール開発なども選択肢に入れられる
  • バリューサイクルが短いため、小さな成功体験を積み重ねやすい
課題と改善点

一方で、以前のスクラムチームと比較すると、チームのメンバーが流動的に入れ替わるようになったことにより、チームでメンティーを受け入れるという意識が希薄になりがちです。

  • メンターへの依存度が高くなり、他のメンバーとの関わりが限定的になる可能性がある
  • チーム全体でのナレッジ共有や相互学習の機会が減少する
  • メンターの負荷が高くなる

これらの課題に対して、以下のような改善が必要だと考えています。

  • チーム全体で新メンバーを受け入れる意識を醸成する
  • FASTミーティングでの積極的な対話を促進する
  • ペアプログラミングやモブプログラミングの機会を増やす
  • メンター以外のメンバーとも気軽に相談できる雰囲気を作る

FASTの良さを活かしながら、チーム全体での成長を促進できる環境作りを目指していきたいと思います。

メンティー(石川)からみたオンボーディング

メンティーとしてFASTのオンボーディングを経験し、感じたメリット、課題、そして改善アイデアを共有します。FASTミーティングで活用されるOST(※)の経験も踏まえています。 (※オープン・スペース・テクノロジー:FASTの着想元となった対話・議論手法)

良かった点
  • 新メンバーのモチベーション維持
    •  少人数チームで貢献が明確になり、主体的に関与しやすい
    •  コレクティブ全体に対してチームの状況の共有をバリューサイクルごとに毎回行うので、自律性が高くなり目的意識がはっきりする

  • オープンで安全なコミュニケーション
    • OSTの原則の1つ「ここにやってきた人は、誰でも適任者」によって、就職・転職後によくある「自分はここにいるのにふさわしいのかどうか」という悩みが打ち消される
    •  ログラスにおいては、会社全体の「新人の意見は仕組みをアップデートする宝だからどんどん言ってほしい!」という空気とも相性が良く、より発言しやすい環境

  • 挑戦を後押しする文化
    • 「手を挙げた人がリーダー」だから新人でも新しいことにチャレンジできる
    • もちろん周囲も全力フォローしてくれる姿勢がある
課題と改善点
  • 固定されている要素が少ないので、慣れるのが難しい
    •  FASTでは実際にタスクを進める方法はチームごとにバラバラで、FASTのアプローチ方法も流動的に変化する。そのためオンボーディング対象が特定できず迷子になってしまう

  • オンボーディングチームにメンター以外が関わりにくい
    • 前述の「チームでメンティーを受け入れるという意識が希薄になりがち」と共通で、チームが流動的なのでオンボーディングの責任をチーム単位で持ちにくい。その結果メンター以外のサポートメンバーが入りずらくフォローが不十分になる

これらに対する解決策や改善のアイディアは、下記のようなものがあるかと思います。

  • 具体的なルーティンよりも、それを実行させているFASTの考え方を理解するように意識する
    •  うまく言えませんが個人的には、「自分が所属するこのコレクティブ(ログラスではプロダクトのドメインからとって『経営管理コレクティブ』という固有名詞で呼ばれている)をどうしていきたいか?それについて自分に何ができるか?」という観点で考えるようにしたら、流動性が高くても理解しやすくなったかなと感じました

  • 「オンボーディング用チーム」にしない
    •  チームの主目的は事業上の成果達成に置き、そのプロセスの中で新メンバーが学び貢献できるような設計にする。これにより、メンター以外のメンバーからの自然なサポートも期待できる

改善に向けた取り組み

上記で挙げた課題を解決するため、ログラスでは以下の改善を進めています。

  • チーム全体で新メンバーをサポートする文化の醸成
    • メンターの責務とチーム全体の責務の言語化
    • メンター以外のチームメンバーとの1on1の実施

  • FASTの考え方を重視したオンボーディング設計の見直し
    •  FASTの原理原則や思想を理解することを重視したオンボーディングコンテンツの拡充

まだまだ着手できていない改善点も多いですが、FASTの特性を活かしたオンボーディングの実現に向けて継続的に取り組んでいきます。

おわりに

本記事では、FASTにおけるオンボーディングについて、メンターとメンティーの両方の視点から共有しました。

FASTは超軽量なフレームワークであり、最低限のルールしか決まっていません。それゆえに自律性が求められます。一方で、新しく入ってきたメンバーがいきなり自律性を発揮するのは難しい側面があります。この課題に対して、ログラスではオンボーディングのプロセスの見直しと仕組み化を進めることで解決を図っています。

FASTの良さを活かしながら、より効果的なオンボーディングの実現を目指していきたいと思います!

次回の「#私から見たFAST」シリーズ第2弾は、「領域横断チームメンバーとFAST」というテーマで、フロントエンド領域を得意とするエンジニアがFASTとどう向き合ったかを紹介したいと思います。お楽しみに!

イベント案内

7月にアジャイルやFASTをテーマにしたイベントを開催します!
どちらもオンライン / オフラインのハイブリッド開催で、オフラインでは懇親会もご用意しています。ぜひご参加ください!

7月17日(木)19:00- 「アジャイル×AIの今と未来を語る」日本にアジャイルを広めた先駆者・平鍋氏とログラスCTOが「アジャイル × AI」をテーマに対談します。
FASTについてもテーマに取り上げ、両者の視点から語ります。

7月24日(木)19:00-「Loglass Tech Talk vol.6 FAST実践のリアル〜壁にぶつかり、悩み、試し続けた1年間〜」FASTを実践した1年間のリアルな苦悩や試行錯誤を、エンジニア、QA、PdM、デザイナーといった各ロールの視点から発信します!

【ログラス】2025年 協賛イベントまとめ

ログラスは2025年も、さまざまな技術カンファレンス・コミュニティイベントを応援しています💪
本記事では2025年協賛させていただいたイベントを開催日順にご紹介します📣(随時更新予定)

協賛イベント一覧(開催順)

1月

Regional Scrum Gathering Tokyo 2025
🗓 2025年1月8日〜1月10日
🤝 ロゴスポンサーとして協賛

2月

EMConf JP 2025
🗓 2025年2月27日
🤝 シルバースポンサーとして協賛

3月

Scrum Fest Fukuoka 2025
🗓 2025年3月7日〜3月8日
🤝 シルバースポンサーとして協賛

Agile PBL祭り 2025
🗓 2025年3月23日
🤝 シルバースポンサーとして協賛

5月

Scrum Fest Niigata 2025
🗓 2025年5月9日〜5月10日
🤝 シルバースポンサーとして協賛

6月

AI Engineering Summit
🗓 2025年6月11日
🤝 スポンサーとして協賛

関数型まつり2025
🗓 2025年6月14日〜6月15日
🤝 シルバースポンサーとして協賛

7月

開発生産性Conference 2025
🗓 2025年7月3日〜7月4日
🤝 ゴールドスポンサーとして協賛

Scrum Fest Osaka 2025
🗓 2025年7月18日〜7月19日
🤝 シルバースポンサーとして協賛

8月

Scrum Fest Sendai 2025
🗓 2025年8月29日〜8月30日
🤝 シルバースポンサーとして協賛

9月

Scrum Fest Mikawa 2025
🗓 2025年9月5日〜9月6日
🤝 シルバースポンサーとして協賛

Platform Engineering Kaigi2025
🗓 2025年9月18日
🤝 ブロンズスポンサーとして協賛

11月

Kotlin Fest 2025
🗓 2025年11月1日
🤝 ゴールドスポンサーとして協賛

アーキテクチャConference2025
🗓 2025年11月20日〜11月21日
🤝 ゴールドスポンサーとして協賛

FASTに関するログラスの取り組み_記事・登壇資料まとめ

ログラスがスケーリングアプローチとして取り組むアジャイルフレームワーク「FAST」に関する記事・登壇資料をまとめてお届けします。

CTO 伊藤による「開発生産性Conference2024」の登壇資料
VPoE 飯田による「開発生産性Conference2025」の登壇資料

VPoE 飯田・アジャイルコーチ 今井による「RSGT 2025」の登壇資料
エンジニア粟田による「Scrum Fest Kanazawa 2025」の登壇資料
エンジニア粟田による「Loglass Tech Talk vol.6」の登壇資料

エンジニア粟田による「Scrum Fest Sendai 2025」登壇資料

agile journey様によるVPoE 飯田とエンジニア 南部のインタビュー記事
EM 塩谷によるFASTについて説明した記事
FASTにおけるオンボーディングに関する記事
横断チームメンバー目線での気付きや学びについての記事
PdM・デザイナー目線での所感や気付きについての記事
FASTを導入したログラス開発チームの変遷についての記事
FAST×AIで考える、未来の組織像についての記事
アジャイルコーチ 大野によるFASTにおける「ふりかえり」模索の記事
"FAST実践の1年を振り返る"をテーマにした「Loglass Tech Talk vol.6」のアーカイブ動画

"FAST導入"をテーマにした「Loglass Tech Talk vol.4」のアーカイブ動画・登壇資料